整体よもやま話

頚椎の不正が肩の痛みへ

肩の痛みには、肩に原因がある場合と、他の場所、例えば今回紹介するかたのように、首(頚椎)に原因がある場合もあります。
1年前に転倒し、地面に手をついて転んだ時に、肩を痛めました。
痛む場所は、肩関節の前側です。
この一年、ずっと治りきらずに痛みは続いているそうです。
痛みが出始めの2ヶ月間は、就寝中に「ジクジク痛む」感じがあったそうです。
夜間痛です。
今は、夜間痛は出なくなっています。
肩の痛む場所(左肩の前側の結節間溝)には、押すと痛い圧痛があります。
自分でその場所を、伸ばしたり揉んだりしていたそうです。
それでかえって、痛みが強くなりました。
肩の痛む部分(結節間溝)は、上腕二頭筋の腱が通っている場所です。
そこは、誰でも強く押すと痛みがでます。
押して痛みがあるからと言って、悪いと判断をするべきではありません。
強く揉みすぎて、上腕二頭筋の腱に炎症を起こしてしまうと、肩に痛みが出ます。
肩の検査をしていきます。
肩を色々と動かしてもらいましたが、肩の可動域に大きな制限はないようです。
肩周りの筋肉を調べましたが、異常な緊張・凝りは見つかりません。
更に細かい動作テストを肩に行います。
すると、ある特定の位置から肩を動かす動きだけ痛みがでました。
その動きだけは、激痛が走り出来ません。
それは、脇を閉めた状態からの動きです。
脇をしっかり締めた状態を保って、腕を上に上げる、あるいは肩関節を外旋させる(脇を締めて肘を直角に曲げて前腕を外へ広げる動作)と激痛が走ります。
どうやら、上腕二頭筋腱の損傷が原因のようです。
しかしそれが一年も治らないのは、ちょっと時間がかかりすぎ。
腱の治癒を妨げる原因が、他にあるのでしょう。
しかし、肩の検査では、特別目立った緊張は見当たりません。
そこで、視野を広げて、首の動きを検査する事にします。
首の動作テスト(首を前後左右に動かす)をします。
首の左回旋にいくらか制限があります。
可動域の減少と、関節のなめらかさが低下しています。
さらに大きく左方向へねじると、痛む左肩前面に向けて、首から鈍い嫌な痛みが広がります。
首の動きで痛みが誘発されるとは、本人も気が付いていませんでした。
ここまで首を大きくねじる事は、普段あまりないのでしょう。
それで気付かなかったようです。
頸椎に問題がある事ははっきりしたので、ここからは頸椎の細かい検査を行います。
仰向けで頸椎を触診すると、頚椎7番が左側がに少し出っ張っています。
緊張による歪みです。
そのまま頸椎7番を両手の平で支えて、緊張で傾いている所で支え直しをします。
緩むまでしばらく待つと、首の緊張が次第に緩んできました。
これで、首を左にねじっても、嫌な痛みが肩に出なくなりました。

首の動きでの肩への放散痛は無くなりましたが、まだ肩の動きは完全ではありません。
腕を上げると、肩に少し痛みが出ます。
施術前のような、激痛は無くなりました。
頸椎7番の緊張が完全に取れるまで施術を続け、3週間ほどで肩の痛みは解消されました。
頸椎7番にかかっていた緊張が取れて、上腕二頭筋腱の修復が再開出来たのでしょう。
一年続いた痛みです。
腱にいくらか癒着も出ていました。
もし癒着がもっとひどければ、ここまでスッキリとは痛みが無くならなかったかもしれません。

腕の筋肉は、頚椎から出ている神経によって支配されています。
カイロプラクティックなどでは、神経が圧迫され、腕に異常が出ると考えます。
私は、そういう風には考えていません。
神経が圧迫されて異常が起きる事もあると思います。
しかし、その場合は、運動神経の麻痺や感覚神経の麻痺が起きます。
痛むのは、麻痺とは逆の現象。
別に原因があると考えるのが妥当です。
何が原因か?
痛みを最も出しやすい、痛みにとても敏感なもの。
筋肉です(軟部組織)。
素直に考えれば、そうなります。
筋肉は、痛みに敏感なだけでなく、少し離れた場所に痛みを放散させる特徴があります。
この特徴が、まるで神経痛のような錯覚を招きます。

肩の協調運動について。
肩を動かす際は、肩関節だけが動くのではなく、肩甲骨や肋骨、胸椎、頚椎が協調して動きます。
これらどの場所に緊張が起こっても、協調した動きに制限が掛かります。
結果、肩が故障してしまいます。
特に、脇をしめた状態で腕を動かすには、頚椎7番周辺が柔軟に動く必要があります。
一カ所の頸椎の緊張でも、それが協調した動きの邪魔をする場合は、肩に過剰な負担がかかります。
負荷のかかった肩は、楽な動きが出来ません。
軽く脇を締めた方が楽な場合でも、脇を開けたポジションを取りがちになる。
すると、不安定な使い方をしている肩周辺にも、次第に緊張が発生。
慢性疲労や損傷を起こす筋肉が増え始めます。

また、このかたのように、痛む場所が悪いと思い込み、そこを強く押したり揉んだりすれば治ると思うのは間違いです。
壊れている組織を更に壊す。
自分で慢性化させてしまうこともあります。
自分の体のどこがスムーズに動いていないか、これを正確に感じるのはなかなか難しい。
ですが、前後左右の動きを丁寧に比較することで、その感覚を磨くことも大事です。

2018年7月加筆修正(2021.09更新)