整体(手技療法)の技術を体術と同じと考えると、その極意は武術の極意と通じるように思います。
体の動きの研究と武術好きが高じて、2008年から合気道を習い始めました。
以前空手を習っていたので力には少し自信があったのですが、合気道の師範に技をかけられるとなぜか抵抗できずに崩れてしまいます。
関節を極められて痛くて崩れると言うわけではありません。
痛くないのになぜか抵抗できず一気に全身が崩れ落ちてしまうのです。
力で抵抗しようとするほど勢い良く崩れます。
普通の動きではないようですが、どういう動きなのかがわかりません。
合気をかけるとか呼吸力とか相手の力に逆らわずとか気を出すとか、人によって説明が違っていてどうも意味が解かりませんでした。
そうは言っても、動き・動作で崩されているのは間違いないはず。
そこにはきちんと理屈・原理があるはずだと思い、その後ずいぶんと研究しました。
合気道では、技を行うさいの注意として、
姿勢を正す、力で無理やり崩そうとしない、そっと撫でるようにする、呼吸を合わせる
などが言われるのですが、この注意点はそのまま整体(手技療法)の注意点と言ってもいいぐらい見事に一致しています。
整体(手技療法)も相手の体に対して技を掛けていると考えれば、合気道と同じ体術という分類に入るのだと思います。
それなら原理(極意)も共通しているのではないかと考えました。
合気道では、相手に手首を掴まれてから技を掛けるシチュエーションが多くあります。
その時やってはいけないのが、持たれた所を無理に動かそうとする事。
無理に動かそうとすると、引っ張ったり押し込んだりと、力んだ力が出てしまいます。
持たれている所は動かさずに動くが正解なのですが、ちょっと難解ですよね。
実際の感覚としては、押しもせず引きもせず、持たれている所がその場所で「浮いているような状態」を作れると、相手が出している力の方向がはっきりとわかるようになり、さらに浮いた状態を維持したままであれば、力の方向に対抗して不思議ですがフワッと動くことが出来るようになります。
この時、相手のバランスが一気に崩れ、技がかかります。
整体(手技療法)においても、ほとんどこれと同じような感覚で緊張を緩めています。
患者さんの体の中の緊張が、合気道で言う相手の抵抗です。
体の中の緊張している部分を見つけたら、そこが一旦浮いた状態を作り、緊張の方向を正確に感じ取り、浮いた状態を維持させることで緊張に抵抗させずに緩めます。
両者の違いと言えば、合気道は意識的な緊張に対してで、整体では無意識に起きている緊張に対して行っているというぐらいです。
難しいのは、無意識の緊張の方ですね。
意識的な緊張と違い、どこにその緊張があるのか先ず見つけることから始めないといけませんので。
かなり集中して探さないと、見逃すことが多々ありますが、意識的な緊張は相手が積極的に力をかけてくれるので、探す必要が無くわかりやすいです。
武術も整体も、同じ人の身体を扱う技術で、同じ原理なのでしょう。
当院の施術法「集心法」は、このように無意識に緊張した筋肉のロックを解除し緩めます。
緊張のロックが緩むと、体の正しい連動や循環も回復します。
緊張を力づくでなんとかしようとするのではなく、緊張が反発できない、抵抗させない動きを使うことで緩めています。
2016年6月掲載(2022.06更正)