広島市安佐南区長束 整体の安穏亭

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手を当てるだけでゆるむ

世の中には軽く手を当てただけのような施術法が沢山あります。
そんな弱い力で緊張している筋肉がゆるんだり、痛みが取れる事があるのか?疑問に思う方も多いと思います。
強い力でなければ人の体に変化を与えることは出来ない。
と考えるのが普通でしょうから。

当院の施術法である集心法も、非常に小さな動きの技術なので、そんな事で治るのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、強い力をかけるとはどういうことなのか?
なぜ弱い力でも体に変化を与えることが出来るのか?
をここでは考えてみたいと思います。

まずは強い力をかけるとはどういうことかを考えたいと思います。
手のひらで相手の体に触れる動きを使って話を進めます。
手のひらで強い力を加えるためには、加えたい力と同じ大きさで押し返して来る力が必要になります。
押し返してもらわなければ空気を押しているのと同じで力を強くかける事が出来ません。
なので押す側としては力を掛けやすい押し返してくる方向へ向けて一生懸命力をかけてしまいます。
この動きは大きい力を掛けてみればもっとはっきり分かりますが、自分の体重(重さ)を手のひらに掛けようとしている動きです。
自分の重さを手のひらに掛けてそれを相手に支えてもらっている動きです。

もう一つの方は触れるだけのような弱い力です。
弱い力と書くと押す力が弱いだけと勘違いされそうですが、力の強弱を言っているわけではなく動きのメカニズムの違いなので、ここからは強い力を「押す」弱い力を「触れる」と言う表現に変えます。
「触れる」方の動きは、空気中で何も無いところを手のひらを動かす時の動きと同じです。
空気の抵抗はほとんどないので、当然楽々手のひらを移動させることが出来、体のどこにも力みは発生していないと思います。
他にもコップを口元へ運んでくる動きも同じです。
どちらの動きももちろん力(筋力)が全くいらないのかと言われればそんなことは無く、力(筋力)は当然必要です。
ただしどちらも腕やコップへ体重をかけようとしていないのは分かりますよね。
腕やコップを支えて移動させているだけの動きです。
ちなみに人によってはこの動きでも力んでしまう人がいるので、なるべく楽~~に太極拳のような柔らかなイメージでやってください。
このとき体の中では腕の動きに合わせて重心の移動が自然と行われています。
たぶん訓練した人でなければ感じないぐらいの重心移動の感覚ですが、力みが無ければ自然とだれでも出来る動きです。

さてこの「押す」と「触れる」の二つの動きを施術で使う場合どうなるのか。
とその前に施術部位から出ている固さや緊張による抵抗について少し話しておきます。
体を触った時に例えば筋肉がなんだか固くなってるなあと感じることはあると思います。
この時固さを確かめるために「押す」やり方で触っているのですが、この触り方で感じる固さの方向は実は緊張の方向(緩めたい方向)とはかなりズレています。
どういうこと?と思うかもしれませんが、細かく説明すると長くなって書ききれないので、ざっくり概要だけ話します。
筋肉の力の向きは一方向のみ、つまりその筋肉が縮む方向にだけ発生します。
伸びる方向には発生しません。
引っ張れるけれど押せないと言い換えれます。
けれど実際押し返してくるように感じると思います。
これは骨と複数の筋肉が繋がって働くことで特定の部分を外へ押し出す力を見かけ上作り出しているからです。

この見かけ上の力へ向かって「押す」のは、例えると棒を地面に斜めに立ててそれを一生懸命地面に向けて突き刺す方向に押し込んでいるようなもので、普通この棒を倒そうと思ったら素直に向こうへ押してやればいいだけですよね。
棒で例えると当たり前のことですが、相手が棒じゃなくて力を出し返してくる人間だったり筋肉だったりすると、途端にこの当たり前の動きが出来なくなり、必死で地面に向けて突き刺すように「押す」動きをやってしまいます。
「押す」動きが体重をかける動きだってのが図を見るとよくわかると思います。
緊張して固くなっている患部の緊張の方向は、図で言うと青矢印に沿った方向になります。
でも「押す」と抵抗を黄色矢印に沿った方向に感じているわけです。
ところがこれを「触れる」動きで触ると正確に青矢印方向を感じることが出来るようになります。
もちろん正しく「触れる」動きを実現しないとダメですが、感覚の鋭い人なら感性だけで出来るようになるかも知れません。
「押す」のではなく「触れ続ける」事が出来れば、図の青矢印のように楽々棒を倒す動きが出来るのと同様に楽々筋肉の緊張を緩めることが可能になります。
概要だけの説明ですがイメージはこんな感じです。
とにかく力んで「押そう」と思ってはダメで、「触れる」ことで移動させる方向が定まります。
体重がかかる動きはすべてNGだと思えばほぼ間違いありません。

では実際に「触れる」動きを実現するにはどうすればいいのかなのですが、全然普通の動きなのですがそれをこのシチュエーションでやることが難しく、相当感性が良いか長い時間訓練するかのどっちかです。
そこで細かい体の動きは置いとくとして、ちょっとしたイメージを持つことである程度近い感覚で動けるコツのよなものをご紹介します。
それは当てている手のひらが相手の体の中に溶け込んで通過していくようなイメージです。
そうイメージすることで力んで「押す」必要は無いのだという気持ちを作り出し、空気の中を抵抗なく手のひらを動かしている時の力みのない動きが現れやすくなります。

手を「触れる」と言う感覚と、強い力で「押す」と言う感覚は動きの上で全く違う動きで、その目的・方向性・結果が全て変わります。
この二つが全くの別の動きだと言う事がわかってもらえたでしょうか。
力の強弱の問題では無く、動きの本質の違いなのです。
実際には抵抗(力み)の出ている患部に触れてその抵抗力に影響されずに手を当て「触れる」感覚にすることはそう簡単なことではありません。
やろうと思う心、治したいと言う思いが強すぎても力んだ動きに引きずり込まれてしまいます。
とは言え何も考えずにただ手で触っただけでは何も起きません。
力みに影響されず手のひらで「触れる」が自在に出来て初めて上手く行きます。
十分訓練しなければ上手くはいきません。

2017.10掲載(2021.09更正)

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