今回の話は、何年も前から、右の腰から→お尻→太もも→ふくらはぎに向けてシビレが出ている30代女性です。
来院時には、既に整形外科での受診を済ませていました。
整形外科での診断結果は、坐骨神経痛。
整形外科では、電気を当てる治療と、腰の牽引療法、理学療法をやってきたそうです。
ですが、シビレが治らないそうで、来院されました。
整形外科でレントゲン検査を済ませているので、骨折・ヒビの可能性は除外です。
動作テストから始めます。
シビレが増す動作を調べる為に、いくつかの動きをやってもらいます。
すると、体を前に倒すのと、後ろに反らすので(腰の前後屈動作)、シビレが増します。
ところが、体をねじる動き(腰の左右回旋)や横に倒す動き(腰の左右側屈)では、シビレは出ません。
他にもいくつかチェックを行い、どんな動作でどこが動作の支点になっているかを見る事で、悪い場所の目星をつけて行きます。
そうやって見て行くと、痛み発生の原因箇所(緊張部)は、腰の付け根(下部腰椎)周辺のようです。
下部腰椎を細かく触診・検査して行くと、腰仙部と言って第5腰椎と仙骨の境目が、緊張して緩まなくなっています。
この緊張のため、重心の移動が腰仙部で引っかかり、体を前に曲げる動作や、後ろに反らす動作で、重心の前後移動がスムーズに出来無くなっています。
これでは、腰仙部に上半身の重さが何倍にもなってかかって来ます。
そこで出来た痛みは、下肢へ向けて放散しやすく、このかたの痺れも、そう言った流れで発生しているのでしょう。
腰仙部の緊張を緩めて行く事にします。
仰向けで寝てもらい、仙骨と腸骨を両手で把握し、腰仙部を支えるように持ちます。
腰仙部にある緊張の為、緊張のある方向へ傾いていくので、傾かないようにバランスの取れる位置で支え直します。
少し待つと、だんだんと緊張が緩み始め、腰仙部で固定されていた重心軸が動けるようになってきました。
すると、それと共に、腰からふくらはぎにかけてのシビレは出なくなりました。
腰の付け根(腰仙部)周辺に痛みがあると、その痛みがお尻や脚に広がって(放散痛または関連痛)感じることがあります。
坐骨神経は、腰からお尻を通って太ももの裏からふくらはぎへと走行しています。
腰仙部から放散する痛みが、坐骨神経の走行と重なっているので、坐骨神経が痛みを出していると思ってしまいますよね。
でも、坐骨神経には実は問題は無く、むしろ坐骨神経は正常に機能している、正常に痛みを伝えている、と言えます。
坐骨神経は、筋肉から発せられた痛みを正しく伝達している、と言うことです。
ただ、脳がこの痛みの出所を正確に把握できず、痛みを広範囲に感じてしまうため、ビリビリッと広がる神経痛と勘違いしてしまうので。
痛む場所が正確に把握できないなんて、そんなはず無いと思うかもしれません。
でも、結構痛みは適当にしか認識されていません。
体にとって、痛み(侵害刺激)があるのか無いのか、それがどの辺に有るのか大雑把にさえわかれば十分事足りるのです。
痛みは只の危険信号なので、大げさに言うと、有るか無いかが分ればよい。
触覚(皮膚の物を触る感覚)の様な繊細さは必要ないのです。
2017年掲載(2021.09更正)