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骨のゆがみ、関節のズレ・そんなの本当に有るの?

整体やカイロプラクティック業界ではよく言われる言葉、関節や骨の歪みやズレ。
私はカイロプラクティック出身なので、関節の亜脱臼(ズレ)の存在ありきで学院でもそれを検査する方法や直す技術を学んできました。
しかし、学べば学ぶほどにその理論や技術に疑問を持ちましたし、そう感じている人たちは業界にも多いと思います。
ここでは、関節のズレや関節がボキッと鳴ってはまったように感じる現象について、少し考察してみようと思います。

1、関節がボキッと鳴るのって何?

関節が「ボキッ!」関節を鳴らさない
整体やカイロプラクティックと言えばこのイメージが未だに強いのではないでしょうか。
いわゆるスラストテクニックです。
私も一番最初はカイロプラクティック学院でこれを学んだので、このテクニックも練習しました。
ここでは、関節が鳴る原理やその時の身体の反応や結果について考えたいと思います。

関節が鳴るメカニズム

ただ単に関節を鳴らすだけであれば、結構出来る人が沢山います。
自分で腰をひねったり、首をねじったりして、「ボキボキッ」と鳴らせる人たち。
指の関節も鳴らせる人が多いと思います。
私も首も腰も、指はグー握るだけでボキボキ鳴らせます。
学生のころから出来ました。
面白くて鳴らせるのを自慢してましたね。
社会人になって腰痛が出るようになってからは、特に腰はしょっちゅう鳴らしていました。
腰がこわばってくると、ボキっと鳴らしたくなり、鳴らすとなんか楽になるので。
でもしばらくするとまた鳴らしたくなるので、1日十数回鳴らしていたでしょうか。
今考えると正直後悔しています。

キャビテーション説

さて、関節が鳴る原理を考えてみたいと思います。
関節が鳴る原理で一番メジャーな説は「キャビテーション説」です。
このキャビテーション説は、関節が鳴る時に関節内部の液体中に小さな気泡が生じ、それが弾けて音が鳴るという考えです。
特徴は、一度音が鳴るとしばらくは原理的に音が鳴らせなくなる事です。
注意点として、気泡がはじける際に激しい衝撃波が生じるため、何度も繰り返していると、その衝撃で関節が破壊される、と言われています。
 それが確かなら、かなり問題がありそうですね。

骨同士がこすれる音説

他にも説があって、骨と骨がこすれ合って音が鳴っているとする説もあります。
この場合は、音は何度でも鳴らせます。
ちなみに、私の首と腰は一度「ボキっ」と鳴らすと、その後しばらくは鳴らせなくなりますが、指の関節は連続して何度でも無限に鳴らせます。
音の鳴る原理が一つではないことが、私の経験でも明らかです。

ボキっとなったら関節はどうなるの?

次は音が鳴る時の、関節周囲の筋肉や靭帯の状態を考えてみます。
ボキッと鳴らすときには、関節をねじったり引っ張ったりして力を加えます。
このどちらの動きも関節面が離開する力(離れていく力)が働きます。
離開する方向は、つまり脱臼する方向と同じです。
関節は離れる動きを嫌います。
離れてしまっては不安定になるうえ、壊れやすくもなり、力を上手く伝えることもできません。
もちろんそうならないような構造になっています。
関節が離れないようにつないでいる主要な構造は、骨ではなく筋肉や靭帯です。
筋肉や靭帯が協力して関節としての機能が保たれるよう構成しています。
「ボキっ」と鳴らす行為は、それら筋肉・靭帯に瞬間的に大きな力を加わえ、もしその力に筋肉・靭帯組織が耐えられなければそれらは破壊される可能性があります。
関節周囲の安全を考えれば、ボキっと鳴らす際の動きはかなりリスクが高そうですね。

関節を壊す動きの学習

次はちょっと変わった方向から。
「動きの学習」という側面から考えてみたいと思います。
関節の機能構造のおさらいですが、骨(関節面)と骨(関節面)が向かい合っているのが関節です。
凸凹同士がカパッとはまってもう外れません、と言うようなプラモデルのジョイント部分のような構造はしていません。
なので関節面同士が離れないように繋ぎ止めているのが、筋肉やじん帯です。
つまり骨と筋肉と靭帯などの構造がすべて合わさって関節構造が出来上がり、そして関節が機能を持つのです。
このような構造に力や重さをかけて動かせば、普通に考えれば簡単に関節が外れます。
しかし実際にはかなり大きな力や動きに耐える事が出来ると言うことは皆さんも実感として持っていると思います。
それは関節が外れてしまうような離開方向の力が関節に掛からないように、体の位置、重心の移動などによって高度にコントロールされているからです。
このコントロールがなければ、手を突いただけで関節が壊れたりヒビが入ります。
転んだら重症でしょうね。
重い物も持てないし、それどころか歩くだけで膝が壊れるでしょうね。
このコントロールは誰しも赤ちゃんの頃から地道に身につけてきた、本当に大事な感覚です。
しかし、関節を鳴らすときの動きと言うのは、このコントロールを完全に無視した、あえて関節が外れる方向に力をかける本来ならあり得ない動きなわけです。
動きを繰り返すということは、良くも悪くもその動きを学習してしまうということ。
つまり体を壊す動きをわざわざ練習しているようなものです。
自分で関節を鳴らせる方は、その時の動きや感覚が普段とは違う力んだ力を関節に加えているのを感じると思います。
そうしないと鳴らせないでしょう。
この動きを日常的に反復させていると、次第に体がこの動きを覚えてしまい、本来の高度にコントロールされた動きに支障が出てしまいます。
普段の何気ない動作のなかでも関節に負荷を与えるような動き、不自然な動きが癖になるのです。

関節鳴らすのがなぜ癖になる?

それでは、なぜ関節を鳴らすと気持ちよく楽になった感じがするのかについて考えてみたいと思います。
筋肉には防御用の反射機能があり、壊れそうな大きな力が働きそうになると力を抜いてしまう反応を起こします。
関節を鳴らすと、この反射反応によって周囲の筋肉が弛緩する(腱紡錘反射)が起こると言われています。
この反射が出れば、確かに緊張が一気にほぐれるような感じにはなるのですが、一時的な反射反応のため時間が経過するとまた緊張しはじめます。
ちょうどまた関節が鳴らせるようになる頃には凝って来るってことですね。
そのため自分で鳴らす人は、一日に何度もボキボキやってボキボキ依存症みたいになってしまっています。

当院の患者さんにも、学生のころから腰・首と自分で鳴らす癖がつき、十数年毎日何度も鳴らしてきた人がいました。
鳴らし始めた当初は別に体には何の異常もなかったそうなのですが、しだいに鳴らさないとスッキリしなくなって来たそうです。
関節の鳴らし方もどんどんエスカレートして行ったそうです。
そして遂に鳴らしていた首や腰にこわばりを感じるようになりました。
そして慢性的な首の痛みと腰痛に悩まされることになってしまったそうです。
この方には、関節を鳴らすことを一切禁じました。
 そうやって施術を行っていくことで、ほぼ痛みは無くなり、鳴らす癖も無くなっていきました。

私自身も昔は慢性腰痛があり、自分で毎日鳴らしていましたが、やはり同じような経過をたどりました。
くせになっている人は、鳴らすのを我慢するのは大変かもしれません。

2、「骨がズレる」を考えてみます

骨がズレる。よく聞く言葉だと思います。yugami
「骨盤のズレ」や「背骨のズレ」などと言われるものです。
そして、ズレた骨を押し込めば治ると思っているかたも多いようです。
この考えは、患者さん側だけではなく、施術者の側にもあるようです。

骨がズレる? それをはめる?
まるでプラモデルやロボットのような、そんな話が本当にあるのでしょうか。
理科室の骨格模型(全身)を見たことがあるでしょうか。
骨と骨とが繋がった部分(関節)は、針金で繋いであったと思います。
何故なら、そうしないとバラバラになってしまうからです。
関節の構造は骨と骨とが隣り合って並んでいるだけで、プラモデルのジョイント部分のようにカチっとハマっているわけではありません。
ここを意外と勘違いしてしまっている人が多くいるようです。

もし関節がカチッとハマるように作られていたら、滑らかな動作は難しくなり、各関節には過剰な負荷がかかり、損傷や痛みを招くことになります。
骨格模型の場合、針金で骨と骨を繋いでいるのですが、人体の場合は骨と骨とをじん帯や筋肉、皮膚や脂肪などを使って関節を繋いでいます。
この関節を繋いでいる組織の中で、自在に形を変える(意識して)ことが出来るのは筋肉だけです。

ある筋肉に通常以上の緊張命令が出され、それが解除できなくなると、その筋肉は短くなったままになり普通には伸ばすことが出来ません。
その結果関節の機能は低下し、可動域の減少や運動軌道の異常などが起こります。
この現象が「関節のズレ」の正体であり、その事により見た目の姿勢の歪みや感覚の左右差などが引き起こされます。

ここで重要なポイントは、そのズレを起こしているのが骨格構造ではなく、筋肉を主にした軟部組織であると言う事です。
骨格構造がズレているのなら、エイッと押し込めが直るかもしれません。
しかし、筋肉のコントロールに狂いが出ているのですから、このコントロールを正常にしない限りこのズレは直らないでしょう。

筋肉へ命令を出しているのは、「脳」です。
脳にある大脳皮質運動野という部分。
この命令は脊髄を伝わり筋肉へ届き、その結果、筋肉に収縮が起きます。
筋肉は収縮した後に、詳しい事後報告を脳へと送り返します。
どれくらいの強さで、どれくらいの時間収縮したかなどです。
このやり取りが非常に重要で、脳は自分が出した命令に対する結果を、筋肉から答えとしてもらうことで、正しく制御できたかどうかを知ります。

例えば強く収縮しすぎた場合は、次の命令で少し力を抜くようにします。
めまぐるしいやり取りが、高速で常に行われているのです。
この「筋肉―脳」のやり取りに不具合が起きることが、多くの不調の原因になっています。
「筋肉―脳」のやり取りに不具合が出た結果、ゆがみを起こすのです。

どうやって「脳―筋肉」間のやり取り(脳神経系)にアプローチするか。
多くの人が考えてきた結果、様々なアプローチ方法(手技療法・流派)が生まれました。
各療法には、それぞれ独自の考えや方法があり、その有効性については議論の必要がありますが、どのような方法でも、結果として「脳―筋肉」間のやり取り(脳神経系)にうまくアプローチすることが出来れば、その療法は良い結果を招く事でしょう。

例えば、本人は骨の構造的なズレをエイっ!とはめ込んだつもりで施術をしたとしても、その過程で偶然、筋肉や脳神経系にアプローチ出来ていれば、施術は良い結果が現われるでしょう。
しかし、人の身体がどのように制御され、どのように維持されているのかをよく考えず、見た目の歪みに目を奪われ、それを力ずくで動かそうと考えれば、いつか人の体を壊すことになりかねません。
更には、施術者としてこのような無理な力の使い方をしていると、その負荷は自分の体にも帰ってくるため、いずれ施術者自身の体を壊すことにもなると思います。

2015年掲載(2021.09更正)

 

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