些細なことがきっかけで痛み出るようになり、それが消えなくなる事があります。
今回の話は、立ち上がる時にほんのちょっと足首をひねっただけなのに、それを切っ掛けに足首の痛みが消えなくなった話です。
50代女性。
1週間前から、右足首に痛みがあります。
原因を聞くと、横座りから立ち上がるときに、ちょっと足首をひねったそうです。
それから、痛みがずっと続いています。
でも、そんなに激しくひねったわけではありません。
ほんのちょっと、少し変な動きで捻ったぐらい。
どんな動きで痛むのか聞くと、歩くのは大丈夫。
ただ、何かの拍子に、不意に痛みが強く出るそうで、その時の足首の動きを上手く説明できないようです。
施術は、痛みを再現させるための動作テストから始めます。
まずは、足首の動作テス。
足首を各方向(屈曲、伸展、内反、外反)に自分で動かしてもらいます。
予想通り、これら単純な動きでは、ハッキリとした痛みは再現されません。
今度は、私が足首を動かしてみます。
すると、伸展(底屈)で少し違和感が出るようです。
ですが、痛みは無いと言います。
そこで今度は、カカトをもって持ち上げてみると(カカトが前方へ移動する向き)、痛みがで出ました。
これはかなり痛いようです。
逆にカカトを後ろへ押すのは、痛みがありません。
どうやら単純な曲げ伸ばしの方向ではなく、足首の関節面の水平方向で痛みが出ているようです。
足首の関節の緊張の方向を探ります。
足首を両手で包んで、支えるように持ちます。
緊張で傾きが出ている足首の関節は、そのまま持っていると緊張の方向に傾き始めるので、それが傾かないように支える位置を変え、緩むのを待ちます。
しばらくすると、足首の感じが最初とは変わってきたので、そろそろ良いかなと言うところで、痛みを確かめてみました。
先ほど痛みが出た動きをやりましたが、痛みはもう出なくなっていました。
その他の動きも一通りチェック。
どの動きも痛みが出ないことを確認。
最後に、立って歩いてもらって、問題はないようなので、問題なしと判断し、終了しました。
ほんのちょっとの変な足首の使い方。
これが今回の痛みを起こした原因です。
そんなことで痛みが続くのか?と思うかもしれませんが、私からすれば、人の体が壊れずに動くことの方が不思議に思います。
実際かなり激しい動きや負荷にも耐えることが出来ますが、それは体の素材や構造が頑丈だからではありません。
壊れないように、各部の高度なコントロールが行われているからです。
このコントロールがなければ、人の体は簡単に壊れます。
このかたの足首も、その時、何かの理由で、コントロールを失った。
そのせいで、ほんの些細なねじれ負荷で壊れてしまったのでしょう。
このコントロールとは、いわゆるバランス感覚(バランス力)です。
今回の症例では、単純に足首に外力が加わって、足首に異常緊張が出来た例です。
しかし、足首以外の場所に異常緊張が出来ても、同じように足首が痛む場合もあります。
その場合は、必ず腰椎、股関節、つまり骨盤周辺を見ます。
足首や膝だけが、何の理由もなく悪くなる事は、あまり無いように思います。
足首・膝関節を直接痛めたなどの理由がなければ、大体は腰周りの問題が影響していることが多いです。
そんなときは、遠回りになるような気がしますが、足首や膝は放っておいて、腰周りから治していくのが、結果的に早期解決につながります。
2016年7月掲載(2021.09更正)