広島市安佐南区長束 整体の安穏亭

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左腰も悪かった右腰の痛み(潜伏する緊張)

腰痛痛みが出ている場所だけに問題があるわけではなく、全然痛みなど出ていない所にも悪い場所が潜んでいる事が有ります。
身体は各部分が連動して動くため、悪い状態も連鎖して広がっていく場合があり、ちょっと分かりにくい関係性を作り出すことがあります。
今回の話は、腰痛のそんな話です。

二番手の痛みは感じにくい

40代男性の人で、1ヶ月前から右の腰痛が出ています。
以前から軽い腰痛はあったそうです。
でも、今回のように1ヶ月も長引くことは今まで無かったそうです。
まず、どんな動きで痛みが出るか(動作痛)の検査をしました。

動作テストで緊張を探す

立った姿勢で(立位)、基本の動作(前屈、後屈、左右回旋、左右側屈)をテストします。
各動作時の、痛みや違和感、左右差など無いか確認します。
前屈と右回旋で、腰の右側に痛みが出ます。
腰椎4番の右です。
その他、右の腰を思い切り伸ばす格好でも少し突っ張り感が出るようですが、痛いほどではないそうです。
次に正座をしてもらい、背中を後ろから観察。
腰椎が右に凸の弯曲を少し描いているのが見えます。
腰椎を触診しながら上半身を左右側屈してもらうと、左側屈はスムーズに曲がるのですが、右側屈の時に腰椎がスムーズに曲がってくれません。
歪みの出ている湾曲方向と逆向きの動きなので、スムーズに動かないのです。
腰椎1番~4番までがセットになってカーブを描いているので、問題は一椎下の腰椎5番にありそうです。

腰椎と仙腸関節を施術

そこで、右側臥位にして、クッションを使って体に力が入らないように寝てもらい、腰椎5番の棘突起に右からコンタクトし、左前方へ向かって軽くおさえます。
手を当てる方向を、抵抗の方向にピッタリ合わせ、支えるようにします。
抵抗がゆるんでくる方向へ向きを変え、その状態を維持します。
次第に腰椎5番の抵抗感が消え、ポニョポニョしてきたので止めます。
そのまま腸骨を少し揺らし、腰椎の動きをチェック。
揺れに追従してスムーズに動いているようなので、再度痛みを検査します。
立って、痛みがあった前屈と右回旋をすると、右回旋の痛みは無くなりました。
前屈の痛みは、まだ半分ほどあります。

今度は、仙腸関節をみていきます。
仙腸関節とは、骨盤の関節で、仙骨の左右にあります。
仰向けで両膝を立てて寝てもらいます。
ゆっくり片足ずつ胸のほうへ上げて、その抵抗感を見ます。
左脚に比べると、右脚に抵抗感が強く出ています。
股関節が90度ほど屈曲した位置から、抵抗がハッキリ増えます。
右仙腸関節周囲に問題がありそうなので、仙腸関節の操作をすることにします。
左側臥位で寝てもらいます。
右手で右坐骨、左手で右腸骨稜にコンタクトし、反時計周りに少しだけ回転させます。
これもすぐ抵抗が出るので、抵抗が強くならない軌道を描くよう操作します。
その際、腰椎5番も右側を触診しておくと、上手くいってると反応が現れます。
食いしばってた顎が、緩むような感じの反応です。
良い反応が出てきたので、立って痛みを再検査しました。
前屈したときの右の腰痛も無くなりました。

二番手の痛みが顔を出す

これで解決と思っていたのですが、右は痛くなくなったが、左の腰に痛みを感じるとおっしゃいます。
このパターンも結構よくあります。
元々、両方の腰が悪くても、本人の感じる(症状として現れる)のはどちらか一方の、より悪い側の痛みだけと言うのは良くあります。
一番痛いところだけが強調されて感じるのです。
1番だった右の痛みが消えたので、2番の左の痛みが顔を出してきたのでしょう。
左腰の痛む場所は、腰椎2番の位置です。
しかし、腰椎の左には問題は見つかりません。
そこで、左仙腸関節を検査すると、そこに緊張が出ていました。
左仙腸関節も緩め、立ってもらうとやっと前屈の痛みが右も左も全て無くなりました。
座位から立つ動作も、動き初めがつらかったのですが、すごく楽になったと言います。
悪かった所をかばう為に働いていた周囲の筋肉が、十分に回復していませんので、2~3日は激しい運動やストレッチをしないように指導して終了にしました。

この症例は、腰椎5番右に問題はあったのですが、左右の仙腸関節にも問題があった例で、施術の過程で痛みが移動していくパターンです。
次の紹介する話は、痛みは移動しないのですが無症状の反対側の腰を治さないと解決しなかった例です。

反対側の腰からの悪影響

腰痛も6年続くとそれなりに成長してきます。腰痛
その過程で増殖した悪いところが影響して、ちょっと分かりにくい腰の痛みかたをする場合もあります。

どの方向でも痛みが出る

30代女性で6年以上腰痛があります。
慢性腰痛ですね。
慢性肩こりもあるようです。
腰の痛みは、左側に出ており、痛みは腰からモモへ広がっています。
ここまでは、よくある腰痛からの下肢への放散痛と言う症状ですが、腕の動作テストをすると、腕を真上に上げると痛みが強くなります。
左腰~モモの痛みです。
また、片腕を上に上げても同じ痛みが出ますし、両腕同時に上げるともっと強く痛みが出ます。
腰の回旋運動や側屈運動でも、全て左腰に痛みが出ます。
もう一つ、仰向けで両膝を曲げ右へ倒すと左腰に痛みが出ます。
痛みが出ないのは、腰の前屈動作だけでした。
痛みが出る動作の種類が兎に角多いのです。
普通これだけの方向で痛みが出るのなら、前屈でも痛みが出る事が多いし、その場合は患部の損傷(炎症)を考えて施術する必要性があります。
慢性腰痛でも、軽度の炎症が慢性的に続いている場合があるので、急性症状では無くても気を付けています。
しかし、どうも違うような感じがします。
仰向けで両膝を曲げ右へ倒すと左腰に痛みが出るので、まずはこの各動作で痛みを減らして行くことにしました。

反対側の腰を緩める

施術は、両膝を色々な方向に小さくゆらします。
特に右膝倒し方向の抵抗(緊張)が高いので、この方向を重点的に行いました。
全ての方向を揺らして緊張を緩めると、最初出ていた腰の動作での痛みはほぼ無くなりました。
片腕ずつ腕を上げても、腰の痛みは出ません。
ただ、両腕同時の時だけ少し痛みが出るようです。
これでいったん終了し、一週間後にもう一度施術を行うことにしました。

前回の施術以降、腰の痛みはほとんど無くなり、良い状態を保っていました。
少し気になることもたまにあるそうですが、すぐ治まる痛みのようです。
疲れたときに、お尻に重い感じが出るそうです。
動作テストをすると、立って腰を左回旋させると左鼠径部に少し痛みが出ます。
そこで、左鼠径部(骨盤の内側)にあった緊張をゆるめると、左鼡径部の痛みは無くなりました。
しかし、問題はそれだけではありませんでした。
症状はすべて左サイド(左半身)に出ており、実際左サイドに緊張部分も多くありました。
しかし、それを緩めただけでは、左サイドにかかってしまう負荷を十分小さくすることが出来なかったようです。
最後の決め手は、右側の腰にありました。
右側には何も症状は出ていませんが、よく調べてみると腰の深~い部分に緊張が出ています。
有ると思って調べないと見逃してしまうような緊張です。
どうやらこの緊張が腰椎を傾かせ、左サイドに負荷を多くかけてしまう姿勢・動作を作っていたようです。
右側の腰の緊張も緩めると、左サイドへ掛かっていた負荷をが無くなったようで、やっと症状はスッキリ出なくなりました。

緊張の連鎖

この症状の始まりが、右腰の緊張からなのか、それとも左からなのか、どっちなのでしょうか?
一カ所悪いところが出来ても、体はそれをかばって隠してしまう事があります。
うまく隠せると、症状はその部分には出ませんが、結局、体の動作にアンバランスが出るため、いつの間にか別の場所に緊張を作ってしまいます。
緊張の連鎖です。
ストレス過剰や加齢、不規則な生活習慣などによって体の耐力(許容範囲)が小さくなると、一番負荷のかかっている場所に、何がしかの症状が現れやすくなります。
たまたまそこに症状が現れているだけで、原因は離れた場所にあるかも知れません。
ちなみに、腕を上げて腰~モモに痛みが出るのは、腰の重心の移動が前側へ移動しにくくなっていたためです。
普通、腕を上にあげると重心は体のやや前側へ移動するのですが、その為には腰の筋肉をスムーズに動かさなければいけません。
腰の緊張が出ていると、この動作が上手くできずに、前に移動するはずの重心が後ろに残ったままになります。
すると腕の重さがテコの原理で腰にかかり、痛みや損傷を誘発してしまいます。

2014年掲載(2022.04更正)

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