広島市安佐南区長束 整体の安穏亭

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筋緊張から見る 症状の原因と直す方法

痛みやシビレ、こわばりなど様々な症状の原因とは何なのか。
それを直すにはどのような方法が考えられるのか。
症状の原因が筋肉の緊張から始まっているとしたうえで、それを直す方法を考えてみたいと思います。

症状を起こす筋緊張

痛む、痺れる、こわばる、曲がらないなどの症状が発生している辺りを調べると、筋肉がうまく縮むことが出来ない部分と、うまく伸びることが出来ない部分が見つかります。
便宜上前者の縮めない部分を「伸長部」、後者の伸びない部分を「短縮部」と呼ぶ事にします。

背骨の図

図Aは背骨をあらわしていて、図Aのように重なった骨の間を「関節」として機能させるために、図Bのように沢山の筋肉が骨の前後左右に付着しています。
それらの筋群によってコントロールされた骨と骨が関節として機能し、背骨全体を安定させ、連続した滑らかな動作を可能にします。

今、図Bの①の筋肉への制御が狂ったとします。
制御が狂うと筋肉は弛緩ではなく緊張方向へ命令が強く働く傾向がある為、筋肉は過緊張状態となります。
①部には筋肉が過緊張して縮んだままになった「短縮部」が作られます。
短縮部が作られると、その関節は図Cの様に右へ傾き、☆部分の関節が閉じた状態になります。
短縮部の反対側(左側)には伸びた状態(関節が開いた状態)が作られ、縮めない部分つまり「伸長部」が作られます。
伸長部は常に伸ばされながら力を出さなければならず、過剰に疲労しやすい部分になります。
周辺の筋肉にも同様の状態が波及し、図C-②③のように短縮部、伸長部のエリアが広がっていきます。

症状は痛み以外にも、可動域の低下や廃用性萎縮(使わないことで衰える)、慢性筋肉疲労、周辺の代謝低下(血液循環低下)、姿勢のアンバランスなど多岐にわたります。

全ての原因は①の短縮部によって作られる力(緊張)なのですが、症状の出やすい伸長部に着目しがちになっているように思います。
伸長部への施術でも一時的な症状の緩和には役立つと思いますが、おおもとの原因を残したままでは解決になりません。

短縮部①は症状を出していない場合もあるので発見が非常に難しいのです。

次は、この短縮部①を緩める方法についていくつかの方法を考察してみたいと思います。

短縮部を緩める方法

まずは短縮部周辺におきる廃用性筋萎縮について少し説明しておきます。

私たちの手足や体幹の筋肉は日常生活のなかで絶えず動かされその機能を維持しています。
これがひとたび動かされなくなると、急速にその機能は衰え筋肉組織は退化し筋力は低下、関節の動きも固くなっていきます。
そのスピードは思った以上に速く、1週間で元の約70%に、2週間後約50%に、1ヵ月後約25%に萎縮すると言われています。
関節を正常に治したとしても、その影響により廃用性萎縮が起きている筋肉が、すぐには正常に働き始めることはありません。
これらの筋肉が正常に回復するまでには、おおよそ3ヶ月は必要で、その間は再発に注意しながら上手に体を動かしていく必要があります。

さて、①の「短縮部」ですが、どんな方法でゆるめて正常にさせることが出来るでしょうか。
その方法をいくつか考えてみたいと思います。

1,相反抑制の利用

自分でストレッチや運動をして①の短縮部が伸びればいいのですが、動かしたぐらいでは簡単に伸びないので緊張が固定されているわけですから、ストレッチや運動で伸ばすのは難しいでしょう。
この状態では、短縮部の関節は正常に動けないので、無理に動かすと関節や筋肉を壊したり、伸びたように見えても別の関節が動いただけで短縮部の緊張は解除出来ないでしょう。

では①の短縮部の緊張を極力低下させる方法があれば、それと運動を併用して短縮部を伸ばすことが出来るかもしれません。
そこで「相反抑制」と言う反射作用を利用する方法が考えられます。

相反抑制とは、ある筋が収縮する時にその筋の拮抗筋が抑制される反応のことを言います。
例えば膝を伸ばす時、太ももの前面の筋が収縮しますが、その時同時に膝を曲げるときに働く太ももの後面の筋(ハムストリング)には抑制がかかり弛緩します。
この弛緩は反射によって起こるため、自分の意思とは関係ありません。
この反射を利用すると、伸長部側に少し抵抗を加えて力を入れてもらう「アイソメトリック収縮」で緩める事が出来そうです。
施術者が、抵抗を加える加減をうまく調整して相反抑制がかかったまま短縮が伸びるように導けば、上手く行きそうです。

簡単そうなのですが、実際は術者と患者双方が上手に動きと力加減をコントロールしないと難しそうです。
不用意に力んでしまうタイプの方には特に難しくなるでしょうね。
上手くできれば患部に直接触ることなく効果を出すことが出来るかも知れません。
また動きを工夫すれば、自分ひとりでも出来る動きなので、セルフケアとして利用することも出来ますね。

2,逃避反射を利用する

人の体には、反射システムが沢山実装されています。
その中でも他よりも優先して強力な原始反射が、逃避反射=屈曲反射です。
痛みを受けると、痛みから逃げるために、刺激部位と同側の屈筋を収縮し、伸筋を弛緩させます。
下等動物では、「引っ込め反射」として観察されます。
この「伸筋を弛緩させる」反応を、緊張を緩めたい場所に起こせれば良さそうです。

微細な痛みを使う

痛みを作る方法としては、鍼灸で使う鍼(ハリ)が良いかもしれません。
ハリを刺したときの痛みだけでなく、ハリをさした場所にはその後も微細な損傷が起きます。
意識には上らないほどの小さな痛みですが、逃避反射を継続させる効果があるかも知れません。

ハリで傷つけなくても、薬局などで売っている、短いトゲの出たエレキバンのようなものも利用できるでしょう。
これを貼っておくと、動くたびに皮膚にわずかな痛みを何度も与えます。
皮膚はとても敏感なので、この痛みで逃避反射が多きるかも知れません。

触れられる感覚を使う

触れられる程度の感覚でも、逃避反射と同様の反応が起きているように思います。
ただし強く押してしまうと、反対に反発しようと力を押し返してくるので、強く押すのではなく触れるだけにします。
昔から言われる「手あて」の原理なのかも知れません。

3,脳(心理面)から

意識には新しい部分と古い部分があり、新しい部分は脳の表のほうにあって古い部分は脳の内側のほうにあります。
新しいほうの意識は、いわゆる普通に感じる意識のことですが、深部にある古い意識(原始的な部分)は自分でもあまり認識できないところで働いています。
人には沢山のストレスがいつもかかっています。
原始的な部分にかかるストレスは反射的に正しく回避出来やすいのですが、新しい意識部分にかかるストレスは社会通年などにより正しく回避できず、無理してしまうことがよくあります。
その影響が体への継続的な緊張を生み、関節のコントロール異常へと繋がることがあります。
痛みに対する過剰な不安、症状に対する間違った知識、日常の過剰なストレスなどによる悪影響です。
そこでその人が抱えている日常での過剰なストレスをなるべく減らせるようアドバイスし、そして痛みとは何なのか、痛む場所で何が起こっているのか、どうなれば回復するのか、などの正しい知識を指導することで余計な不安を減らし、全身の緊張レベルを正常化し回復を促すことが出来るかも知れません。
カウンセリングですね。

4,局所麻酔による

①に局所麻酔を打つ方法も考えられます。
知覚神経、運動神経を麻痺させておけば、麻酔が効いているあいだは働きを抑えることができます。
急性の時などはこの方法が最も効果的かもしれません。
その状態で軽い運動やストレッチを行い、動きを回復させればいいと思います。
但しこの方法は医者しか出来ません。

まとめ

いくつかの方法を私なりに考察してみましたが、机上の空論と言う部分もあるのですべてそんなにうまくは行かないと思いますが、いろいろな方法を考えてみるのは技術発展には欠かせない思考訓練になると思います。
実施の臨床では、複数の短縮部①が同時発生しそれらが複雑に組み合わさって症状を作っているので、まずは一番に必要なのは、複雑な状況を分析し把握する技術だと思います。

2010年掲載(2022.04更正)

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