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整体よもやま話

筋緊張から見る!異常箇所を直す方法

前記事筋緊張から見る!原因箇所の異常から今回はその治療法についていくつか考察していきます。

背骨イラスト

図の説明は、前回の記事を参照ください。まずは異常箇所周辺におきる廃用性筋萎縮について少し説明しておきます。

私たちの手足や体幹の筋肉は日常生活のなかで絶えず動かされその機能を維持しています。これがひとたび動かされなくなると、急速にその機能は衰え筋肉組織は退化し筋力は低下、関節の動きも固くなっていきます。そのスピードは思った以上に速く、1週間で元の約70%に、2週間後約50%に、1ヵ月後約25%に萎縮すると言われています。関節を正常に治したとしても、その影響により廃用性萎縮が起きている筋肉がすぐには正常に働き始めることはありません。これらの筋肉が正常に回復するまでにはおおよそ3ヶ月は必要で、その間は再発に注意しながら上手に体を動かしていく必要があります。

さて、①の「短縮部」ですが、どんな方法でも良いので、短縮部が出している力(緊張)をゆるめて正常にさせることが出来れば良いわけです。ではその方法をいくつか考えてみたいと思います。

1,運動療法。

自分で運動して①の短縮部が伸びればいいのですが、動かしたぐらいでは簡単に伸びないために緊張が固定されているのですから。今の状態では、短縮部の関節は正常な動きを起こせず、無理に動かしても別の関節が動くだけで短縮部の緊張解除は見込めません。

では①の短縮部の緊張を極力低下させる方法があれば、それと運動を併用して短縮部を伸ばすことが出来そうです。そこで「相反抑制」と言う反射作用を利用します。

相反抑制とは、ある筋が収縮する時にその筋の拮抗筋が抑制される反応のことを言います。
例えば膝を伸ばす時、太ももの前面の筋が収縮しますが、その時同時に拮抗筋である太ももの後面の筋(ハムストリング)は抑制がかかり弛緩し、この弛緩は反射によって起こるため自分の意思とは関係なく起こります。これを利用して、本人に過労部に力を入れてもらい、それに対して少し抵抗を加えるアイソメトリック収縮を利用することが出来ます。抵抗を与える量を動きが止まってしまわない程度にすれば、相反抑制によって緊張が少し緩んだ短縮部⓵はゆっくり伸びる可能性が出ます。

簡単そうなのですが、実際は術者と患者双方が上手に動きと力加減をコントロールしないとうまくいきません。不用意に力んでしまうタイプの方には難しくなると思いますが、うまくできれば患部に触る必要も無く効果を出すことができるかも知れません。また動きを工夫すれば自分ひとりでも出来る動きなので、セルフケアとして利用することも出来そうです。

2,術者が動かす方法

今度は患者は動かずに術者が他動的に動かす方法を考えます。

動かす方向は短縮部①を伸ばす方向、つまり緊張している筋肉に対してその繊維方向に常に平行な動きを作り出さなければいけません。ところが、筋肉は骨に付着しておりその骨はまた下の骨と連結しています。そのためこの緊張部を伸ばそうとしてもそこにかかる力の向きは、付着している骨を支点にしてその骨を倒す方向に働いてしまいます。これは本来求めている方向とはかなりズレた方向になっています。これでは①の緊張にドンドン抵抗され、伸ばすことは出来ません。
そこで、過部の抵抗を感じた時点でそれ以上抵抗が強くも弱くもならない釣り合った状態を作り、その部分へ動きの中心(重心)を移動させていく事が出来れば、緊張に沿った方向の動きを作る事が出来、短縮部を伸ばすことが出来ます。これは「集心法(しゅうしんほう)」と名付けた安穏亭の基本手技の原理です。術者自身に特殊な動きが要求されるので、訓練を積んでいない素人の方にはかなり難しい動きで、セルフケアには向かないかもしれません。ただコツを掴めば力も必要なく、力の弱い方でも出来る技術です。詳細は中心軸のズレを直す軌道(集心法)を御覧ください。

3,逃避反射を利用する

人の体には多くの反射がプログラムされています。反射とは本人の意識には無関係におきる動きで、この動きと意識された動きの合成で体を動かしています。関節のコントロールの異常は意識される動きのほうに強く関わっています。反射の動きは覚えなくとも元々体に備わっている動きなので、意識的な動きに比べてとても理にかなった正しい動きを起こします。そこで反射の動きのみを患部に起こせば、正常な回復を導くことが出来ます。

図Cの①の反対側にそっと手を触れます。患者には意識的な動きをしないように脱力してもらいます。手で強く押してしまうと、患者は意識の動きで反発しようと力を入れてくるので、押さないように触れるだけにします。すると患部では反射的に触れられた場所から逃げようとする動きが起こります。反射による動きなので、うまくできれば過部①は弛緩、反対側は収縮して、理想的な軌道を描きつつ関節は動き、緊張部がゆるんでくるでしょう。昔から言われる「手あて」なのかもしれません。

4,脳(心理面)から

意識には新しい部分と古い部分があり、新しい部分は脳の表のほうにあって古い部分は脳の内側のほうにあります。新しいほうの意識は、いわゆる普通に感じる意識のことですが、深部にある古い意識(原始的な部分)は自分でもあまり認識できないところで働いています。
人には沢山のストレスがいつもかかっています。原始的な部分にかかるストレスは反射的に正しく回避出来やすいのですが、新しい意識部分にかかるストレスは社会通年などにより正しく回避できず、無理してしまうことがよくあります。その影響が体への動きの乱れを生み、関節のコントロール異常へと繋がることがあります。痛みに対する過剰な不安、症状に対する間違った知識、日常の過剰なストレスなどによる悪影響です。
そこでその方が抱えている日常での過剰なストレスを、なるべく減らせるようアドバイスし、そして痛みとは何なのか、痛む場所で何が起こっているのか、どうなれば回復するのかなどの正しい知識を指導することで余計な不安を減らし、回復を促すことが出来るかも知れません。カウンセリングですね。

5,局所麻酔による

①に局所麻酔を打つ方法も考えられます。 知覚神経、運動神経を麻痺させておけば、麻酔が効いているあいだは働きを抑えることができます。急性の時などはこの方法が最も効果的かもしれません。その状態で軽い運動やストレッチを行い、正しい動きを回復させればいいと思います。但しこの方法は医者しか出来ません。

6,微細な痛みを使う

3の逃避反射と同じなのですが、触れる感覚を使うのではなくハリを使って表面にチクっとした痛みを与え、それにより反射を起こす方法も考えられます。図Cの場合は左側に痛みを訴えることおわりと多いので、左側でも最も痛む場所(仮にツボとしておきます)の皮膚にハリを刺すことで、逃避反射を起こさせ動きを導く方法です。逃避反射とは痛みから逃げようとする原始反射です。鍼灸で使う長いハリを使わなくても、薬局などで売っている短い針の出たエレキバンのようなものでも効果はあると思います。
この方法を体の動きの連動性と絡めてうまく利用すれば、患部からかなり離れた場所の圧痛点を刺激することでも患部の緊張を緩め痛みを改善することが出来るかもしれません。例えば腰の痛みに足の指の圧痛点など。他にもアイデアしだいで色々な方法が考えられます。

7,まとめ

いくつかの方法を私なりに考察してみましたが、机上の空論と言う部分もあるのですべてそんなにうまくは行かないと思いますが、いろいろな方法を考えてみるのは技術発展には欠かせない思考訓練になると思います。
実施の臨床では、複数の短縮部①が同時発生しそれらが複雑に組み合わさって症状を作っているので、まずは一番先に必要なのは、複雑な状況を分析し把握する技術だと思います。

2018年8月加筆修正(2012.01更新)