近所の動物園に展示されている動物の骨格標本。
イヌ、ネコ、アフリカゾウ、ローランドゴリラなどがあります。
施術の中で胸鎖関節(鎖骨と胸骨の関節)の調整というのもあるので、人間以外の動物の鎖骨ってどんな形なのかなと思い見ていると・・・・ゴリラの標本はやはり人間とよく似ていますね。
もちろん人間と同様、立派な鎖骨もついてます。
ところが、イヌやネコ、ゾウの標本を見ると鎖骨らしいものがありません。
あれ!何でだっけ?という事で、鎖骨についてちょっと調べてみました。
人以外でもリスやウサギ、鳥など腕を自分の体重を支える以外の目的で使用する動物には鎖骨があります。
これは腕の複雑で自由度の高い動きを可能にしているのが鎖骨だからです。
人の場合、鎖骨には「三角筋」「僧帽筋」「大胸筋」「胸鎖乳突筋」の4つの筋が付着しており、肩を安定させ腕をいろいろな方向へ動かす役目をしているわけです。
逆に、腕が体重を支える事を主の目的として、さほど複雑な動きを必要としない動物、ゾウやイヌなどは鎖骨がないのです。
鳥類は非常に鎖骨が進化した動物で、人間のように鎖骨が左右で分かれておらず、真ん中でくっついたV字形の一体構造をしています。
鳥類の場合はこれを「鎖骨(さこつ)」ではなく「叉骨(さこつ)」と言い、英語でウイッシュボーンと言います。
叉骨は鳥が羽ばたくときに、打ち下ろした翼を跳ね上げるのに胸でバネのように作用しており、まさに鳥類が飛ぶために進化したような骨なのです。
ネコにもかなり退化はしているのですが、ちゃんと鎖骨はあるようです。
このおかげでネコはイヌと違って木にしがみついたり、ネコじゃらしを手で掴もうとしたりと複雑な動きが可能になります。
また、鎖骨がある程度退化しているおかげで、ネコは狭いところでも鎖骨が引っかからずに肩をすぼめて通り抜けることができます。
さてここで鎖骨の形成について。
骨格には一般的に 外骨格 と 内骨格 に分けられます。
外骨格は皮骨とも呼ばれ体の表層に形成されます。
カメやアルマジロの甲羅がそうですね。
内骨格は軟骨性骨とも呼ばれ体の内部に形成されます。
四肢の骨、背骨、肋骨などがそうです。
この外骨格と内骨格。
発生の様式が違っています。
内骨格の場合は、まず骨は軟骨として形成され、その後軟骨が骨組織に置き換わって行きます。
これを軟骨性骨化といいます。
外骨格はこの軟骨の形成がなく、直接骨組織が出来上がっていきます。
膜性骨化といいます。
哺乳類は進化する過程で、外骨格が退化して内骨格が発達してきました。
そのため人の骨のほとんどは軟骨性骨化で出来ているのですが、頭蓋骨と鎖骨だけは膜性骨化で出来ています。
これは太古の時代の外骨格の名残と考えられています。
ずっと大昔の外骨格を持っていた頃の名残が人間にも残っているなんて不思議ですね。
ちなみに人の遺伝性骨疾患とし鎖骨頭蓋異形成症というのがあります。
これは外骨格である頭蓋骨と鎖骨の形成不全や欠如が見られる疾患で、内骨格である背骨や四肢の骨などには異常は見られません。
一方、無軟骨形成症という疾患では、内骨格の背骨や太ももの骨の軟骨部に著明な形成不全が現れますが、外骨格である頭蓋骨や鎖骨には異常は出ません。
色々な人の鎖骨を見ていると、人によってずいぶんと鎖骨の状態に違いがあります。
鎖骨が上に上がって首に巻きついたような状態(Vネックのシャツの襟首のような感じ)の人や、ずいぶん下に下がったような人もいますね。
人の腕は360度あらゆる方向に柔軟に動かすことが可能なので、おそらく鎖骨は水平に位置しているのがベストなのだと思います。
子供時代は活発に遊ぶ中で腕もあらゆる方向へ動かします。
体も小さいので物を取るにしても腕をめいいっぱい伸ばします。
自然と鎖骨周りの柔軟性が確保されているのでしょう。
でも、大人になるに従い腕を大きく動かす必要もなくなり、動かす方向もほとんど前ばかり(パソコンや事務仕事など)。
そのせいで肩は前に出て鎖骨は首に巻きついてくるのかもしれません。
腕を前に出す動きは鳥でいうと羽ばたく時の動きですね。
鳥は羽ばたきの為に鎖骨をVの字に発達させてきたのですが、もしかすると人もこの動きばかりしていると鎖骨が鳥のようなⅤ字になってしまうのかもしれません。
鎖骨のところにはリンパが静脈に戻るポイントや、腕に行く神経の束や血管も通っており、また頭をしっかり前に向ける(頭部の屈曲)ための筋肉(胸鎖乳突筋)の付着部でもあり、とても重要な場所です。
鎖骨まわりを固めてしまわないように、あまり腕を動かせていない人や、猫背気味の人なんかは、1日1回ぐらいは腕を大きく回したり上や後ろ、横、下に伸ばしたりして鎖骨の柔らかさを保ってください。
肩や首のこり、腕のシビレやだるさの改善にもつながり、リンパの流れも良くなります。
自分でやる日頃の努力ならタダですよ。
(2014年掲載)22021.09更正