手首の痛みで多いのは、腱鞘炎です。
使い方の悪さや、使い過ぎなどで、腱や腱鞘に炎症が起きます。
今回の話は、手首のケガを切っ掛けにして始まった、手首の痛みです。
症状を見ます。
痛む場所は、右手首です。
日常の動作では、痛みは出ないそうです。
痛むのは、右手首を限界まで曲げた時です。
小指側に嫌な痛みが出ます。
痛みが出るようになった切っ掛けは、半年前のケガです。
そのうち治るだろうと、ストレッチをやって来ました。
しかし、治る気配はないそうです。
半年も前のケガが、今も治っていないというのは、ちょっとおかしいです。
最初のケガの治癒を妨げている何かが、どこかに潜んでいるようです。
先ずは、痛みの再現テストから始めます。
手首を最大限に曲げ、内側へひねると痛みが出ます。
痛みは、手首の小指側に出ます。
痛む動きと真逆の動き、手首を反らし外へ捻る、の動作では、痛みは出ません。
この痛みの出ない動きを利用して、小指側の緊張を緩めます。
痛みが出る動きとは逆の方向へ、関節を動かしていきます。
そのとき、手首の関節に全く痛みが出ていないことを確かめながら。
そこで、しばらく位置を保つと、次第に緊張が緩んでくるのが分かります。
ある程度緩んだ感触が出たので、手首が痛む動きをやってもらいました。
これで手首の痛みは、ほぼ無くなりました。
しかし、10分ぐらいすると痛みが5割ぐらい戻って来ます。
2~3回同じ施術を繰り返しました、
やはり一緒で5割ほど痛みが戻って来ます。
ですが、痛みの種類は変わって来ました。
治る気配がなかったときの痛みとは、少し違う痛みになっているそうです。
痛みの種類が変わってきたのなら、変化が起きている証拠です。
組織修復に時間がかかる場合は、すぐには痛みは消えません。
それで、数日おきに3回の施術を行うことにしました。
3回目で痛みは綺麗に無くなりました。
無事解決できて安心しました。
炎症によって、靭帯や筋膜などの組織変化(器質変化)が起きていたのでしょう(軟部組織の癒着)。
筋肉だけの機能異常(緊張のコントロール異常)なら、短時間で解決します。
ですが、組織変化(癒着)が起きていると、先ず筋緊張をゆるめ、その後、癒着を取り除くという、二段階の施術を行います。
また、癒着による緊張は、筋緊張と違い、緊張の方向が四方八方へ広がっています。
緩めるのにも時間が必要です。
このかたの症状は、可動域限界付近での痛みですから、癒着が残りやすい条件になっていたのでしょう。
ケガをすると、特に成人の場合は100%は元の状態に戻らないと思った方が良いです。
同じところを何度も繰り返しけがをすれば、次第に90%→80%と元に戻る率が下がります。
傷ついた組織には、傷跡がついてしまい、完全には治らない部分が出来てしまう。
「けがをしたらそこが前より強くなる」なんて言われることがありますが、それは嘘です。
ぐじゃぐじゃっと固まって治るので、硬くなったり、太くなったりしますが、実際は前よりも脆くなっています。
齢をとっても運動したいとか、しっかり体を使いたいとか、長いスパンでの目標がある人は、ケガをしないような練習や訓練方法を考えるべきです。
(2018年7月加筆修正)2021.09更新