男性に比べて女性は膝に痛みが出る人が総計的に多いのですが、当院でも膝に痛みを抱えた女性が多く来院されます。
痛みの出かたは人それぞれです。
膝を曲げると痛む人、伸ばすと痛む人、階段の上りで痛む人、下りで痛む人。
痛む場所は、膝の前側、裏側、側面、関節の中が痛む人も。
膝周辺が腫れて(水が溜まって)いる人もそうでない人も。
膝に痛みが出ると正座が出来ない人が多いのですが、中には平気で出来る人もいます。
ほんと色々な痛み方をします。
ここで紹介する症例は、膝周囲の筋緊張のロックで膝関節に歪み(捻じれ)が起き、膝関節が滑らかに動けずに痛みが出ていた人達の話です。
さて膝関節の構造を簡単に。
大腿骨と脛骨、膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨で構成され、関節の間には半月板(軟骨)が挟まっています。
体の中で最大の関節です。
周辺は靭帯や腱が付着しており、側面は側副靭帯、関節内部には十字じん帯(前・後)、前面には膝蓋腱が走行しています。
膝関節はドアの蝶番と同じ構造なので、ドアと同じように一方向のみに動きます(屈伸)。
筋肉もほとんど屈伸方向に付いているので、それ以外の方向へ力が加わると筋力による防御が出来ず、膝の関節を損傷しやすくなります。
60代女性で、左ひざの痛みで正座が出来ません。
歩くのはそれほど痛みは無いようですが、段差を上がるときはちょっと気になるようです。
それと左半身にコリや疲れを強く感じています。
試しに正座をしてもらうと、膝の痛みで上手く正座できません。
両足を右横に出す横座りになってしまいます。
うつぶせで背中の様子を見ると、左半身に疲労を感じるとおっしゃる通り、確かに左半身の筋肉が盛り上がって緊張しています。
次に足の指を見てみました。
両足とも指にコリコリした凝りがたくさん出来ています。
特に左足の中指と薬指に押さえると顕著な痛みがあります。
全身の緊張度が高い感じの人には、緊張を下げるために足の指の緊張を緩めると良いので、一本ずつゆらして緩めました。
揺らすととても気持ちが良いそうで、特に痛みのあった左中指と薬指は入念に緩めました。
足の指のコリを緩めると、全身の緊張度合いがいくらか落ちてきたので、ここからは痛みの出ている膝の施術に移ります。
左ひざを左右にゆっくりねじって、楽に動く方向を探ります。
最も抵抗なく楽に動く方向があったので、そこから元の位置へ関節を戻す方向が最も緊張の強い方向になります。
緊張の強くなる方向で安定するように膝を支えると、その時膝関節の緊張とバランスが取れ、緩む方向が見えてきます。
関節が次第に緩んで、最初の位置(ニュートラルな位置)に抵抗なく戻ってきました。
正座で痛みがどうなっているかを確認してもらうと、「あらっ!正座出来るわね」と言い、痛みは無いそうです。
最初、左の背中に膨張が出ていましたが、膝を治すと自然と膨張が収まったこので、膝をかばっての緊張だったようです。
この人は膝が固まっておらず、周辺の筋肉もまだ伸びる事が出来る状態だったので、スムーズに治りました。
一緒に来られた友人も正座がしにくいのですが、痛みのためずっと正座をしない生活を送って来たそうです。
その為、膝周辺の筋肉が固まって伸びなくなっており、固まった(癒着した)組織部分の緊張を取らないと筋肉の緊張が戻りやすくなってしまいます。
次はこの人の話をします。
60代女性で右ひざの痛みです。
正座をしようとすると右ももの裏、ふくらはぎ、膝の前が痛くて正座ができないそうです。
もう何年も正座をしていません。
膝が曲がる角度の、かなり早い段階で痛みが出ます。
きっかけは、もう何年も前に転んで膝頭を軽く打った後からだそうです。
整形外科で、膝の水を何度か抜いたようですが、膝の痛みは良くなりません。
膝周りは腫れており、膝の裏が最も腫れが大きい。
膝の前面が伸びにくくなっているのもありますが、膝裏がうまく縮めないのが原因のようです。
膝の裏に悪いところがあると、その部分の筋肉は縮むことを嫌います(力を出すことを嫌う)。
その影響で反対側の筋肉、この場合はモモの前側の筋肉の緊張が通常よりも上がり、膝が曲げにくくなることがあります。
膝裏の緊張を緩めて行く事にします。
膝の曲げ角度が45度ぐらいで痛みが出始めます。
そこで膝の角度を痛みの出ない位置まで広げ、ひざ裏の緊張が柔らかくなるように関節を支えます。
支えながら緊張がゆるむまで待って、ある程度ゆるんだので正座をしてもらうと、膝の前の突っ張りがずいぶん無くなり、正座がだいぶ楽に出来るようになりました。
ただ、長期間膝をかばっていたために、膝の皿周りが硬く癒着しているようです。
膝の皿や、関節を包んでいる関節包、周辺の筋肉の膜などが本来は滑らかに滑るのですが、癒着で滑らかさが無くなります。
これは一度では取れない作業なので、時間をかけて少しずつ緩めて行く事になりました。
膝を打撲すると、打撲の程度にもよりますが膝は腫れます。
炎症反応です。
腫れると、膝関節の内圧が上がってしまい、膝を曲げにくくなります。
ここまでは問題なしです。
その後、自然に治癒が進み、炎症が治まってくれば、腫れも引いて膝も曲がるようになって来ます。
順調に治癒が進まなかった時が問題ですね。
腫れ(水がたまった状態)がいつまでも引かないと言うのは、いつまでも炎症が起きているって事です。
何かが膝を攻撃し続けているって事です。
その原因が膝の周辺に出来た緊張なのかも知れません。
緊張のせいで膝関節に過負荷がかかって、膝をコツコツ壊し続けているのかも。
あまりに長くこれが続くと、膝関節に変形を起こしてしまう場合もありますので、注意してください。
(2016年7月)2022.04更正