触診をする手は、純粋な受信機(センサー)の状態にしないと触診が上手くいかない。
自覚しないといけない事は、触診する手に感じている感覚の多くにはノイズ(雑音)が混じっている事。
このノイズの正体とは?
実はノイズは施術者自身が作っている。
施術者が無意識にに加えてしまう「重さ」のことだ。
押す・引く・捻じる
言い方は色々あるが、それら動作の際に「手」に自分の重さを加えてしまうと、その重さが反射して手のひらに帰って来る。
それを患部からの情報と思い込んで、
「患部が緊張している」
「患部が固くなっている」
「患部に違和感がある」
などと勘違いしている。
この「重さ」を「力」と勘違いして感じている人は多い。
わかりやすく例えると、
ペンチで何かを挟むのが「力」。
重さが関与していないのは誰でもわかる。
では壁に刺さった釘をペンチで挟んで抜く。この時は誰でもペンチに重さをかける。
この時釘には「力」と「重さ」両方がかかっている。この重さの部分が、今言っている「ノイズ」。
「重さ」の加わった手のひらで患部に触った時、本当の情報も手のひらには伝わっているが、ノイズのほうが大きいため、混ぜこぜにして感じてしまうと本当のほうの情報はかき消される。
良くある日常の例が、
「あなた肩こってますねえ。ものずごく硬いですよ」
「えっ!そうなんですか?でも肩こりは感じないんですが・・」
「いやあ、でも硬いですよ」
素人(または触診の未熟な人)に起きやすい典型的な例。
肩を触っている人は嘘をついているわけではなく、本当に硬いと感じている。でもその硬さの正体は、自分が加えた「重み」が反発してかえって来たもの。
ノイズの無い「手」で触診すれば、「骨」を触っても硬いとは感じなくなる。
触診をする前に、まずは自分自身の手のひらに自分の重さがかからないように「自分で手のひらを支える」練習をする。
「そんなことすぐ出来る!(^^)」
と思うかもしれないが、誰かに手のひらを上から押してもらえばわかる。
体がギュッと固まって手のひら~腕に体の重さが掛かることに。
これは押されたからなったわけではなく、押される前からわずかだが重さがかかっていて、それに気づけていなかった証拠。
訓練して自分の手のひらに自分の重さを掛けず、手のひらが浮いた状態を作れるようになったら、触診をすることができるようになる。
今回の話の「重さ」をかける動作というのは、動作として悪いわけではなく、ごくごく一般的な動作の加え方であって、一般人は皆そうしている。
つまり技術のいらない普通の動きということ。
そうした普通の動きから「重さ」を除いて「力」のみにすることが技術であって、その動きを施術に利用するからこそ、患者の緊張に変化を与えることができる。
「2025.7.27記」