かかと(踵)は踵骨と言う大きい骨です。
足部の骨で一番大きく最も強い骨で、体重を地面に伝えます。
かかとには、人体中最も太い腱のアキレス腱や、足裏のアーチを補強している足底筋膜という厚い膜が付いています。
かかとの骨に棘(トゲ)が出来る事があります。
骨棘(こつきょく)と言い、余分なとがった骨が増殖したもので、かかとと足底筋膜のつなぎ目に出来る事が多く、通常痛みを伴うのですが、次第に順応して軽減する事もあります。
かかとの骨は代謝速度の速い骨で、骨量の減少が現れやすい骨なので、骨密度の検査に使われます。
ちなみに、猫や犬など四足動物のカカトは地面に付いていません。
彼らはつま先立ちで立っている状態なのです。
かかとの骨は地面からずっと上、「これ肘?」と思ってしまうような場所にあります。
脚全体がスプリングのような働きをして、すごいジャンプ力が出ます。
人間のかかとは、べったり地面に付いていますが、これは真っすぐ立つことに特化しているからです。
体重、特に頭の重さをかかとでしっかり支えられるようになったので、脳が大きく進化したともいわれています。
その代わりジャンプ力は失いました。
かかとに痛みが出るというかたも来院されます。
歩くたびに痛むかた、しゃがんだ時に痛むかたと色々です。
痛みの出る場所や動作によって、原因がふくらはぎにあったり、スネにあったり、足裏にあったりします。
もちろん、かかと自体に原因がある場合もあります。
今回紹介するのは、足首の関節が癒着し歪んでいるのが原因だったかたと、ふくらはぎ・脛・足と広範囲の筋緊張が原因だったかたの施術の話です。
かかとの後面、アキレス腱の付着部に痛みが出ている70代の人の話です。
痛みは4ヶ月前から続いているそうで、足首はいくらか腫れています。
最初は腫れぼったい感じだけだったそうです。
痛みは無かったそうなのですが、ひと月前からアキレス腱付着部に少し痛みが出始めました。
現在は、歩いたりアキレス腱を伸ばすと、アキレス腱に強い痛みが出るようになっています。
40代の頃、踵の骨に骨棘(骨のトゲ)ができ、痛みがひどかった事があるそうです。
病院で注射を打って骨棘を溶かして治したとおっしゃっています。
今でも、アキレス腱の付着部(かかと後面)は肥大しています。
この影響なのか、足首の関節の動きが悪くなっています。
足首の関節(距腿関節)を調べると、アキレス腱側(後方)へかなり寄っています。
アキレス腱には顕著な圧痛があります。
ふくらはぎは緊張しているものの、強い圧痛はありません。
後方へ出た足首の関節を戻る方向に動かそうとすると、強い抵抗(緊張)が出ます。
そこで、踵の骨を両手で支えるように把握し、緊張が出て傾き重くなっている部分を支える位置に変えます。
しばらく待つと緩んでくるはずだったのですが、そう簡単には緩んで来ませんでした。
接着剤で固めているのか?と思うような硬さを感じます。
足首の硬さは30年間の症状ですから、関節に癒着が起きているのでしょう。
癒着の施術に1時間全て使ってしまいました。
それでやっと少し緩み始めた感じで、足首の動きが少しですが広がりました。
立ってもらい痛みを聞くと、痛む場所が最初より少し上の方、ふくらはぎの筋肉の方へ移動しました。
この施術の後、日に日に痛みは小さくなり、数日後には歩いても伸ばしても痛くなくなったそうです。
「両足のカカトが痛む」と言うかたです。
長く立ち仕事をしていると、両足のカカトに強い痛みが出るとおっしゃいます。
建築関係の方なので、屋外での肉体労働が主な作業です。
まず、どんな状態か脚を見てみました。
触診すると、両脚のふくらはぎが緊張で随分硬くなっています。
足の甲には圧痛がいくつかあります。
圧痛は、足の小指、中指、、薬指が強く出ています。
両方の膝裏にも出ています。
スネ(前脛骨部)、右の腰にも緊張が出ていますが、ここにはハッキリした圧痛は出ていません。
カカトに付着しているのは、ふくらはぎの筋肉です。
基本的には、ふくらはぎの緊張を解除していけば良いのですが、このかたの場合、足の甲側に多くの圧痛(緊張)が出ています。
甲の緊張はスネに繋がっているので、スネの緊張をしっかり緩める必要があると判断しました。
スネの緊張状態が緩まなくなると、スネの見た目や感じが少し変わってきます。
スネの骨(脛骨~腓骨)の間が広がって、スネが太くなったような感じになるのです。
すると、アキレス腱側も連動して緊張するので、カカトに負荷が掛かり、痛みが出やすくなります。
まず、ふくらはぎを緩めるために、膝裏に出来ている圧痛を解除します。
これには、操体法を用いました。
これでカカトの痛みは半減しましたが、まだ少し残っています。
次に、足の甲の圧痛点を緩めて行きます。
特に薬指周辺の緊張が高かったので、重点的に緩めます。
施術は、圧痛点を上下から挟んで緊張と釣り合いを取り、緩む方向を探しながら小さく揺らしていくと、次第に緩んで来ました。
次に、スネを緩める施術を行います。
足趾を開いて、足首を底屈方向へ。
スネの緊張と釣り合う位置まで動かしたら、緩むまで待ちます。
ある程度緩んだので、もう一度立ってカカトの痛みをチェック。
すると、両足とも痛みはゼロになりました。
しかし、両足共に同じ症状が出るのは珍しいと思います。
大体は、どちらか片方だけの症状なのですが。
かなりの疲労が両下肢に溜まって、運悪く両脚ともに緊張がロックされてしまったのでしょうか。
(2015年掲載)2022.04更正