誰でも一度ぐらいは首を寝違えた事があるのではないでしょうか?
目が覚めると何だか首に違和感が。
起き上がってみると首が痛くて動かし難い。
しばらくするとさらに痛みは強くなり、痛みで首が回せなくなってしまう。
2~3日すれば自然と治って来ることが殆どだと思いますが、まれに慢性化してしまう事もあり、そうなるとちょっと大変です。
あれっ?治りが悪いなあ。と思ったら早めに処置して、出来るだけ慢性化を防げるようにしたいですね。
寝違えで痛みを出す筋肉の代表は、胸鎖乳突筋と斜角筋でしょうか。
どちらも首の側面に沿って走っている筋肉です。
他にも起立筋、後鋸筋、僧帽筋と可能性は沢山あります。
その人その時によって色々です。
今から紹介するかたは、一週間以上前に寝違えになったのですが、その痛みが治らずに残ってしまった状態でした。
60代の女性で、趣味の手仕事に一生懸命になりすぎて肩こりが溜まりやすい生活習慣です。
月一回ぐらい来院されて、コリを緩めるようにしていました。
今回も一ヶ月ぶりに来られて、どうしのか聞くと、首が痛いと言います。
首の動作テストをしてみると、右の首スジから肩を通って背中へ痛みが出ています。
首の動作では、痛みが強く出る方向と、割と楽に動かせる方向があったので、なるべく楽な方向に首の位置をもってきて緩めて行く事にしました。
痛みが強く出る位置で施術を行うと、痛みで緊張してしまい、緩めにくくなりますので。
仰向けに寝てもらい、楽に動く方向へ首の角度を合わせます。
この位置から、緊張している右首筋の緊張が緩むよう、首の角度や支え方を微妙に変えて行きます。
ちょうど良い位置が見つかったので、そのまま支えて緩むまで待ちます。
緊張していいるポイントからすると、斜角筋の緊張とその影響で胸鎖乳突筋が二次的に緊張している感じでした。
緩むまで少し時間がかかりましたが、緩むまでひたすら待って、十分ゆるんだ感じになったので、起き上がって首の痛みをチェックしました。
もう首には痛みは無く、楽に動かせるようになっていました。
寝違えたと思っても、痛みの原因が首周辺の筋肉にあるとは限りません。
もう少し離れた場所に原因がある場合もありますので、施術をしながら手繰って行きます。
首の痛みを放っておくと、痛みだけではなく日常生活にも色々と支障をきたします。
例えば睡眠障害。
睡眠は心身の回復を促し、免疫機能を強化する役目もあります。
睡眠不足が続けば、日中の活動にも支障をきたしますし、心の健康にも影響します。
人は眠っている間に20数回は寝返りを打ちます。
寝返りを打つことで、同じ場所を圧迫し続けることを避けることが出来ますが、寝返りの回数が少なくなると、圧迫され続けた場所の血行は悪くなり、朝起きた時に疲労が取れておらず、逆に体が痛くなるような事も起こります。
朝起きると腰が痛い人なんかも、寝返りが極端に少なくなっているのかもしれません。
ここで紹介する方は、首に痛みがずっとあって、寝返りを打つと首がつらいので、固まったように眠っているそうです。
たぶん寝返りはあまり打っていないのでしょう。
腰痛も出ているようで、体全体が力んだように力が抜きにくくなっていました。
痛みのある首の周辺を調べると、首の左右に硬結(硬い塊)があります。
ここが緊張ポイントのようです。
首の付け根(頸椎7番と胸椎1番)には、見た目の歪みが大きく出ていて、関節もかなり固くなっています。
首を動かす動作テストをすると、首の筋肉が伸びにくくて張りを感じます。
細かい触診と検査を繰り返し、緊張がロックしている部分(筋肉)を探すと、どうやら菱形筋と言う肩甲骨と背骨をつないでいる筋肉のようです。
菱形筋と繋がっている肩甲骨と胸椎を使ってアプローチし、菱形筋が緩む方向を丁寧に探し続けると、やっと菱形筋が緩む方向が見つかりました。
少し時間がかかりましたが、菱形筋が緩むと共に、首の側面の緊張も連動して緩んで来ました。
それでもまだ首の緊張が少し残っているので、その緊張の出所を探っていくと、首から肩甲骨へ向けて緊張の筋が現れています。
肩甲挙筋だと思います。
肩甲挙筋も同様に緩めていくと、首の両サイドの硬さは完全に消えました。
首を動かしてもらっても、最初の張りは無くなったようです。
施術後のチェックでは問題無さそうでしたが、睡眠が改善するかはまだ分かりません。
しばらく様子を見てもらったところ、その後は寝返りを打っても首がつらくなくなり、睡眠不足も解消し、ついでに体の力みも抜けて、腰の調子も良くなったそうです。
睡眠は脳の休息のためでもありますが、体を治す(あるいは成長させる)時間でもあります。
その大事な睡眠が、「首が痛くて寝返りを打てない」と言うだけのことで、かえって体を疲労させ、壊してしまう時間になってしまうのは、とてももったいないことです。
良い睡眠を十分な時間とって身体を健康に保つためにも、睡眠を妨げている要因は出来るだけ取り除いておきましょう。
何故寝違えが起こるのか?
原因について調べている時に、意図的に寝違えを起こせるのか、自分の首で実験してみようと思い立ちました。
「寝違え・原因」で検索すると、いくつかの要因が出てきます。
私の場合ですが、寝違えは年に1回なるかならないか程度です。
なっても2日も放って置けば自然に治ります。
普段から肩こりも全くありませんし、リウマチもありません。
精神的なストレスはあります。
内臓の疲れは・・あるかもしれません。が、自覚症状は出ていません。
頚椎のズレと言われるものも、自分で診る限りは問題ありません。
もちろん脇の下の神経は圧迫されていないはずです。
今回寝違えを起こす方法として、首の筋肉に過負荷を掛けてみる事にしました。
方法は、右を下にして側臥位に寝て、腕で頭を支えた状態でテレビを見ること。
この体勢だと、右の首は伸びた状態で力が入るので、負荷が結構かかるポジションになります。
ちなみに、脇の神経を圧迫しないように、脇は開いた体勢で行いました。
1日目:
普段は座ってテレビを見ているので、この姿勢をとると首への負担を感じます。
なんとなく嫌な感じです。
でも、体が横になっているので、全体的には楽な感じはします。
2日目:
寝違えは起きなかったので、今日も横向き寝でテレビ鑑賞。
今日は1日目のような首への負担はあまり感じなくなっていました。
なんだか、この姿勢がとても楽な感じがしてきました。
3日目:
まだ寝違えは起きていません。
でも、以前のように座ってテレビを見るのがなんとなくつらくなってきました。
自然と横向きに寝てしまう感じです。
4日目:
寝違え発生しました!
朝起きると右の首が痛くて、首が回らなくなりました。
実験は成功です!
痛む場所は右の首筋から肩にかけて。
頭を右へ回すのと、右へ倒す動きで痛みが顕著に現れます。
頭を左に回すのと左に傾けるのは、まだマシです。
しかし、大きく動かすとやはり右の首に痛みが出ます。
押して痛む場所は、図の赤印の所。
特に頚椎2番、3番の右横と、肩甲骨の上部(肩井)と、肩甲骨の内側に痛みが強く現れます。
ズキズキと痛む感じではなく、こわばった感じです。
時間がたつと、だんだん首の前の方へもこわばりが広がって来ました。
前の晩寝るまでは、さほど違和感は無かったのに、朝起きるとこの状態。
寝ている間に何が起きたのか?
筋肉疲労と眠っている間の冷えが重なって発症したのか?
それとも、知らぬ間に炎症が起きていて、時間とともに広がり、朝痛くなったのか?
首の疲労のせいで変な体勢で寝ていたのか?
痛みがどのタイミングで発生したのかは不明です。
寝ている間にだんだん痛くなったのでしょうか?
それとも朝起きて首を動かした瞬間に痛みが発生したのでしょうか?
この辺の事は、眠っていたのでわかりませんが、とりあえず今回の実験で、首の筋肉を伸ばした状態で持続的に力を入れておくと、寝違えの原因の一つになり得る事がわかりました。
もちろん寝違えの原因は一つではないと思います。
ちなみに、今回と同様の実験を後日もう一度行ったところ、同様に寝違えました。
今回の実験で一番印象的だったのは、2日目以降の感覚の変化です。
初日は、この体勢で横になる事に違和感(不快感)があったのに、2日目、3日目と経つごとに、この体勢の方が楽に感じるようになって、逆にまっすぐ座ってテレビを見るのがしんどくなってしまいました。
これを長く続けると、横向き寝が癖になってしまいそうでした。
楽に感じる姿勢も、本当に楽なのか?
もしかすると楽だと思い込んでいるだけで、実はどこかに極端な負担をかける姿勢になっているのではないか?
そう考える事も必要だと思います。
ちなみに寝違いは、自分で痛みを取る施術を行い、痛みが10➞2まで減少し、翌日には0になりました。
もちろん横向き寝でテレビを見るのは止めました。
2022/4/1作成