股関節が痛む人の話です。
50代の人。
昔から左右の股関節に時々痛みが出ていたようですが、
2年前に膝を痛めてから股関節の痛みがずっと強くなってしまいました。
30分も歩くと、歩くのがつらいほどの痛みが出るので、なかなか重症の部類です。
膝が悪くなった事で、股関節の痛みをさらに悪化させたようです。
膝の痛みは接骨院に通って診てもらったそうで、その時股関節の話もしたようですが、股関節に問題は無いと言われたみたいです。
膝は、伸ばすことは問題無いのですが、曲げると突っ張って痛みます。
水は溜まっていないようですが、膝の皿の動きは悪い。
皿を動かすと「クチュクチュ」と粘って引っ付いた感触がします。
健側を見れば「サラサラ」ですから、比較すると明らかです。
股関節の痛みの切っ掛けは分からないそうですが、膝の痛みの切っ掛けは2年前に急に始めたスクワットのようです。
同じような切っ掛けで、体に痛みが出て慢性化してしまう人が結構多く来ます。
急な運動をしても、普通、慢性化ではなく一時的な筋肉痛で済むものです。
ところが、体のバランス感覚が衰えていたり、ロックした緊張が体に潜んでいると、痛みの慢性化が起きやすくなります。
バランス感覚を先に訓練し直しておくほうが良いですね。
バランスが崩れた状態で体に負荷をかけると、意外と簡単に体は壊れます。
股関節の痛みは何年も前からの症状です。
椅子に座って腰部を見ると、腰椎2番を中心に左に凸の歪みがはっきり出ていて、左の腰に少し痛みもあるようです。
腰椎を左右に側屈させると、やはり左側屈で腰椎が歪な形で曲がります。
脚を動かして股関節の緊張を見ても、股関節から左腰へ向けての緊張が見て取れます。
股関節の周辺を取り巻くような緊張です。
股関節を使って緩めても良いのですが、体の中心に有る骨(背骨や骨盤など)を使って緩めても良いです。
端から中心部へ繋がっている構造が利用出来ます。
ちょっと力を抜くのが苦手そうな人には、中心部から緩めた方が楽です。
仙骨、骨盤、腰椎。
これらにコンタクトして、どの位置で緊張がロックしているのかを探し、重たくなっている部分をしっかり安定させ支えると、周りの緊張から切り離されて緩み始めます。
年数が経っている場合は、しっかり緩むまで待たないといけません。
どの筋肉どの関節周りを具体的に緩めたのかは、重要ではないので省略します。
仙骨、骨盤、腰椎と施術していくと、予想通り腰椎の緊張のロックが最も強く、それがしっかり緩むまで待ちました。
腰椎が緩むと、左腰に少し痛みがあると言っていましたが、それも無くなりました。
膝は、しっかり伸びているのですが、曲げていくと直角ぐらいから膝の皿の上あたりが突っ張って曲げにくくなり、そのまま曲げていくと突っ張りが強くなって痛みになります。
体重をかけていない状態でこれなので、正座は当然出来ません。
ちょっとやってもらったのですが、膝が十分曲がらない分、骨盤を浮かせて無理に座っている感じになります。
皿の動きが明らかに悪いのは分かっています。
粘ついて癒着気味になっているのでしょう。
膝の皿の重さが非常に軽いので、緊張部分を正確に見つけるのが難しいのですが、10分ぐらい使って皿内部と周辺の緊張を緩めて行きました。
皿内部(膝関節との接触面)のネバツキもありますが、皿の外側からモモ外側を通って股関節外側まで緊張の筋が伸びているのが分かります。
膝の皿を緩めているときに、股関節外側に「ズ~ン」と響いてきたそうですが、皿が緩むとスッと楽になったようです。
膝については、関節の滑りや周辺の状態を調べた結果、硬さや癒着は起きていますが、緊張のロックは無いようでした。
痛みだして2年間、しっかり曲げる動作をしてこなかったので、単純に硬くなっているのでしょう。
リハビリをしないといけませんが、その前に股関節からの荷重が楽にかかるようにしないと、リハビリも上手く行きません。
およそ2か月間、定期的に通われました。
施術は腰椎の緊張をゆるめ、股関節や膝へのアンバランスな荷重を改善させ、膝の癒着と強張りをとる方針ですすめました。
年数が結構経過しているので、簡単にとは行きませんでしたが、次第に正座も出来るようになり、最終的には2時間ショッピングで歩き続けても股関節は平気になりました。
無意識に正座をしていて驚いた事もあったようです。
膝はしっかり曲がるようになりましたが、2年間痛かったので、曲げてくださいと言われると、気持ちの中で怖さが少しあるようです。
長年痛みがあると、こういった事はよくあります。
痛みの恐怖が頭に刷り込まれて、変にかばう動きが記憶されてしまいます。
あとは普段の生活動作の中で自然にリハビリされて行くのですが、変に怖がって動かしていると動作が不自然になり良くありません。
あまり焦って曲げようとせずに、気持ちに自信が付いて来るのに合わせて少しずつ運動をしていくように勧めました。
下部腰椎、仙骨や骨盤が合わさった場所は、体全体のバランスを取るのに重要な部分です。
ここがうまく働かないと、下肢への痛みや、時に肩の痛みにも繋がることがあります。
腰が痛くならない場合もあって、症状によっては見逃されることも多く、注意しないといけません。
2022/3/19作成