スポーツでも武道でも、また日常生活での動作、立つ、歩く、座る、運ぶ、持ち上げるなど、どんな体の使い方でも理にかなった動きになるべく近づけることが大事なポイントです。
そうすれば、体を壊すこと、痛みを抱えることなどのリスクを大幅に減らすことができます。
理にかなった動きに近づくために一番重要でかつ基本になるのが重心軸。
重心軸とは何なのか、それをどう扱えばいいのか、その辺の話をちょっと書いてみます。
ちょっとしたエクササイズを書いてみます。
ここでの一番の目的は「重心を感じる事」。
でも、この重心を感覚する事って結構難しい。
そこで誰にでも出来る簡単エクササイズで、重心感覚をつかんで貰えたらなあと思って書きます。
人の体の動きを説明するのはなかなか難しく、全体の動きを同時に表現しなければ正しくなりません。
ちょっとそれは無理なので、今回は丹田(たんでん)の動きに注目して、体を単純構造に簡略化し説明したいと思います。
丹田と言うのは、そういった場所があるわけではありません。
場所は「ヘソの下三寸」だったり、「下っ腹」だったり、色々な言われかたをします。
ここでは丹田の位置を「両脚と背骨を結んだ交差点」を指すことにします。

図(a)は直立した人です。
人の体を3本の棒が逆Yの時に繋がった作りとして話をすすめます。
3本のラインとは、背骨のライン一本と両脚のライン2本です。
そして、それぞれが交わった場所(赤●)が丹田とします。
(a)の図は直立して立っているので、丹田の位置と重心の位置(赤▲)は地面に対し垂直なラインで重なっています。
紹介するエクササイズは二つ。
一つ目は、
「丹田と一緒に重心も移動するエクササイズ」で、
二つ目は、
「丹田だけが移動するエクササイズ」です。
日常生活での体の動かし方は、この二つが混ざっていて、二つの動きを適材適所切り替えながら使っています。
では、一つ目のエクササイズ。

(b)の図です。
丹田を右や左、前、後ろとグルグル水平に動かすだけの動きです。
大事なのは、その時に上半身が丹田の上に真っ直ぐ乗ったままにする事。
そうする事で、丹田の移動に合わせて、丹田●の真下にある重心▲も丹田と共に前後左右グルグルと移動します。
これは、頭の上に本を乗せて落ちないように動くのと同じ動きです。
あまり細かいことは考えなくていいので、書いてある通りに上手にバランスとってやってください。
二つ目のエクササイズは、(c)の図です。

これは上半身を右、左、前後ろと倒すのですが、その時に最初に真ん中にあった重心▲の位置が変わらないようにすることです。
ここは十分意識してください。
丹田の位置が上半身を倒した方向と反対へ動きます。
足を広げてると分かりにくい人は、足をピタッと閉じるとわかると思います。
平均台の上でバランスとってるのと同じ動きです。
二つのエクササイズの方法で、簡単なのは(b)の方だと思います。
でも、普段の生活の中で上手く使えてない動きも実は(b)の方です。
本当は(b)の動きをしないといけないのに、ついつい(c)の方の動きをやっちゃって、身体に必要のない負荷をかけているのが現状です。
このエクササイズは、二つの動きを明確に分けた練習をすることで、重心の感覚をまずは感じれるようになる事。
そして、感覚がつけばコントロールが出来るようになります。
するとその状況に適した方の重心移動を体が勝手にやってくれるようになります。
重心移動の自動化です。
このエクササイズのポイントをラジオ体操なんかにも取り入れて、意識してやってもらうとラジオ体操の効果が抜群に上がると思いますよ。
ここでは重心軸の移動を使った自然な歩き方について書きます。
「カロリーを消費するための無駄な無理な歩き方」ではありません。
「理にかなった楽なで率的な自然な歩き方」についての話です。
先ずは二つの歩き方の違いを書いておきます。
「カロリーを消費するための歩き方」とは、
その通りなのですがエネルギーを無駄に消費すると言う意味です。
とにかく運動量が増えればいいだけの歩き方。
「楽な効率的な歩き方」とは、
「歩く」「進行方向に進む」という目的の為の動きで、それに必要な最小限のエネルギーだけ消費する歩きです。
結構「カロリーを消費するための歩き方」をやってしまってる人が意外と多いです。
例えば、一般的なウォーキングの指導書に書いてある正しい歩き方の説明を引用すると
「ひもで吊るされたような気持ちで立ち、膝を伸ばしてつま先を上げてカカトで着地。
おやゆびの付け根で押し出すように脚を進める。
腕もしっかり振りましょう。」
と言う感じで書かれているようです。
この文章を読んで歩くと、結構多くの人が「カロリーを消費するための歩き方」になってしまうようですね。
文章が間違っているわけではないのですが、読んだ人がイメージを間違って受け取ってしまうのですね。
無駄にエネルギーを消費する動きだと「やった感」はあるし、カロリー消費出来てダイエットやトレーニングには良いかもしれませんが、良い動きではないので膝や腰に故障が出るリスクが高いです。
それにわざわざダメな動きを練習してるわけで、運動音痴になる練習やってるようなものですね。
まあ、それはやらない方が良いでしょうね。
「楽な効率的な歩き方」の特徴を箇条書きしておくと、
・無駄なエネルギーを使わない。
・長時間、長距離歩いても楽に行ける
・スピードや向きを楽にコントロール出来る
・手荷物を持って歩いても楽に行ける
・バランスが取れているので転び難く、仮に転んでも体勢を立て直しやすい
・体に故障が出にくい
などです。ではちょっとした実験をしてみましょう。
実験1)
楽にまっすぐ立った状態から両足の裏にかかっている重心(大体は土踏まずのあたりになると思います)をそ~っとつま先側へ移動させてください。
すると、自然に体が前へ進もうとし始めるはずです。
今度は同じように立った状態から、重心をかかとの方へそーっと移動させてください。
今度は体が後ろへ進もうとし始めるはずです。
つま先やカカトに体重をかけるというイメージではなく、「つま先あるいはカカトで立つ」と言うイメージを持つと、重心が移動します。
もし難しいようだったら、重心を前に移動させる代わりに、片足のカカトをほんの少し後ろへ押してください。
これでも重心が前に移動するので。
この事から、まっすぐ立った状態から重心を移動させるだけで、体を前に進めたり後ろに進めたり出来るのがわかると思います。
では、二つ目の実験。
実験2)壁にカカトと背中をつけてまっすぐ立ち、普通に歩くときのように右足を一歩前に出してください(図1)。
例えば右足を一歩前に出そうとすると体が後ろに倒れようとするのですが、壁が邪魔してうまく足を出しにくいのではないでしょうか。
では今度は同じ姿勢から、片方の足の重心をつま先側へ移動させてください(図2)。
今度は体が後ろに倒れずに、反対側の足が自然に前に出て、壁に邪魔されずスムーズに前に進めたのではないでしょうか?
上手く行かない場合は、先に書いたように重心を前に移動させる代わりにカカトを後ろへ押してください。
「足を一歩前に出す」というイメージで歩くと、わりと多くの人が反対側の足のかかとへ重心を移してしまい、前に進もうとしているのに体は逆に後ろへ進んでしまうと言う非効率的な動きになってしまいます。
後ろに壁があればぶつかってしまって歩けない。
壁がなければ前に進めますが、その時の動きはカカトに重心の乗った足の筋力で体を前に押し出すようにして歩くことになります。
大げさに言うと、歩くのではなく前にジャンプしている感じです。
その際勢いを殺さないとどんどん前に加速してしまうので、前についた足でブレーキをかけることになります。
良い運動にはなるでしょうけど、かなりエネルギーの無駄使いですね。
でもウォーキングをされてる人達の歩き方を見ていると、わりと多くがこのような歩き方をあえてやってるように見えます。
一生懸命歩いてるって感覚が出るので、良いと思うのでしょう。
でも「歩く」目的を考えてください。
歩く目的は、出来るだけ長距離を楽に歩くことではないでしょうか?
そこで、実験2でやったような重心の移動を先行して行うことで、前に移動した重心に体が自然に吸い寄せられてくる動きで歩いてもらいたいのです。
この歩き方であれば、常に重心(バランス)を保ちながら前に移動できるので、上半身もさほど揺れ動くことなく、自然と姿勢の良いフォームで歩けます。
腕の振りでバランスをとる必要もないので振りは小さくなり、荷物を持った状態でも安定して歩くことが出来ます。
後ろ足で蹴りだしたり、前足でブレーキを掛ける必要もないので、必要最低限のエネルギーで楽に前に進めると思います。
普段からやっている人には何のこともない動きですが、普段「カロリーを消費するための歩き方」」が身についてしまっている人には、最初はチョッと難しいかもしれません。
ですが、慣れれば楽に歩けることが実感できると思います。
ではもう一つ実験。
実験3)
水をタップリ入れたコップを二つ用意してください。それを両手で一個ずつ持ってください。
まずは足を一歩前に出すイメージで歩くとどうなりますか?
水がゆれてこぼれそうになりませんか?
では重心を前に移動させる歩き方で試してください。
さっきよりもゆれが少なく、水面の水の状態も感じやすくなっていませんか?
重心の移動やカカトで押すなどの感覚が分からない場合は、コップの水がこぼれないように歩く練習をすればい良いと思います。
水がこぼれなくなれば自然と楽な歩き方が身についているはずです。
では、歩き方を簡単にまとめると
1、左右のカカトをそろえて、つま先は少し外向きにして立つ。
2、片方の足の重心をつま先側へ移動させると、反対側の足の荷重が減ってきて、あるところでまで行くと自然に前に出てくる。
3、前に出てきた足の重心を同じようにつま先側へ移動させると、今度はその反対側の足が前に出てくる。
この繰り返し。
でも、常にこの歩き方をしろと言うわけではありません。
坂道を下る場合はつま先でブレーキをかけながら歩くようにしなければ、どんどんスピードがついて危険です。
状況に合わせて使い分けてください。
この歩き方をいろいろな人に試してもらうと、半分の人はすぐ感覚をつかみましたが、残り半分の方は上手くいかないようでした。
そういった方は、普段からカカトに重心を乗せ、背中を丸めて体を使っている癖があるのかもしれません。
練習して感覚さえつかめれば、猫背改善にもつながると思います。
お試しください。
(2012年掲載) 2021.09更正