4年ぶりに来院くださった50代女性のかたなのですが、どうされたのかと伺うと、左腕全体に痛みと、指先にはシビレが出て、つらい状態が続いていると言います。
久しぶりに長距離ドライブを楽しんだ後から、左肩が凝って来ました。
近所のマッサージや整体に行ったのですが、左肩のコリが次第に痛みとしびれに変わって来たと言います。
近所のマッサージと整体でも治療したのですが、なかなか良くならず、そこの整体で病院を勧められました。
病院での検査(MRI等)結果は、「異常なし」。
その為、特に治療もなかったそうです。
症状は左腕で、左の指の第2と第3指にしびれ感があります。
肩甲骨の周りと、腕の背面には、ジーンと痛みも出ています。
症状は、腕を動かさなくても有ります。
首を左へ倒すと、左腕全体の痛みが増します。
首を後ろに倒すと、肩甲骨辺りへ痛みが放散します。
枕無しで仰向けに寝ると、左腕へシビレと痛みが放散します。
起き上がって腕を動かす事には、それほど影響はありません。
まず検査をします。
触診で、組織の違和感や関節の可動域制限、関節の遊び、緊張のロックの有無などを調べます。
鎖骨の上側の溝部分、ここは斜角筋や胸鎖乳突筋が走っているエリアですが、ここを押さえると、左腕に向かって放散痛が出ます。
左肩の付け根の烏口突起部を押さえても、左腕に痛みが出ます。
さらに、肩関節を外向きにねじっても(外旋)、腕に放散痛が出ます。
肩甲骨と背骨の間の筋肉(菱形筋、起立筋、僧帽筋)にはいくらか浮腫(腫れ)が起きています。
ここは、押さえると鈍痛があり、腕にシビレが放散します。
広範囲に痛みやシビレが広がっています。
検査をしながら、おそらく今回の症状発生の切っ掛けになっている、長距離ドライブの事を聞きました。
運転の姿勢やハンドルの握り方など、どういう姿勢や動作で悪くなったかと言うのは、かなり有益な情報になります。
その姿勢や動作で、過緊張・過負荷が起こりやすい部分はある程度決まっているので、そこから検査範囲を絞り、施術ポイントを決めることが出来ます。
優先するのは、肩前面の烏口突起部と首側面の斜角筋の弛緩です。
次に、浮腫・放散痛も出ている肩甲骨内側面の弛緩。
斜角筋は頸椎から肋骨に伸びている筋肉です。
施術も頸椎と肋骨から行います。
どちらも仰向けの姿勢でコンタクトできるので、緊張している部分を手のひらで支ます。
上手く支えると、バランスの偏ったところへ傾き始めるので、傾かないように支える位置を直します。
そのまま緩むまで待つと、次第に斜角筋は緩んできました。
烏口突起は肩甲骨の一部なので、そこを緩めるには肩甲骨を使います。
肩甲骨全体を両手の平で支え、緊張を緩めて行きます。
肩甲骨の内側(背中)は、うつ伏せで施術します。
胸椎、肋骨、肩甲骨。
仰向け寝で下から支えるのとは違い、うつ伏せ寝で上から支える方法を取ります。
それぞれにアプローチして、同様に緊張を緩めて行きます。
各ポイントが緩むたびに、検査で症状の再現を調べ、各ポイントが緩むにつれ症状は解消ました。
指先のシビレは、もしかすると後遺症として残るかもしれないと考えていました。
感覚神経の感度が低下してシビレを感じているとすると、神経の回復はあまり期待できません。
しかし、幸いにも指先のシビレも改善しましたので、神経へのダメージは無かったようです。
このかたは、実は非常に施術がしにくいタイプで、検査で見つけた緊張が、そこに焦点を当てた途端に「にゅるっ」と逃げてしまいます。
関節の遊びが大きいタイプの人に時々あります。
今回もこれに苦しめられました。
ただ、以前来院してくれていたかたなので、体の癖や特徴を覚えていましたから、まだましでした。
病院の画像検査では、筋肉の異常緊張など機能面の異常は写せません。
なにも写らないので異常無しと診断されますが、触りさえすれば、なんだか変な感じ、違和感、それぐらいは感じる事が出来ます。
進歩して、画像が全てを映し出せるようになれば良いですねえ。
以上
2020/1/13作成 2021.09更正