体の自然な動きとは、体に無理やりな力が加わらず、楽に動作を行う事が出来る動きのことです。
力みの無い身体操作と言いかえてもいいです。
「力みがない=重心が自由に動ける状態」
重心移動が自由な状態を「重心遊動モード」と呼び、逆に重心が固定し力みが発生している状態を「重心固定モード」と言います。
重心固定モードは感覚として分かりやすいため、誤ってこちらのモードの訓練ばかりしている方が多くのジャンルで見られます。
重心遊動モードは、重心が浮かんで漂っている状態なので感覚としてとらえるのが難しく、明確に意識するには固定と浮遊を区別する訓練が必要です。
ここでは、重心移動を知覚させるための簡単な二つの訓練方法とポイントを書きます。
ちなみに重心の固定化は、体の一カ所に過剰負荷をかけ、腰痛や肩こり、ケガなど起こす確立が大きく上昇しますが、重心を遊動させれば、そういったリスクを回避出来るだけでなく、身体能力・運動能力も向上します。
体の動かし方を大きく二つに分けると、「重心を固定した動作」と「重心を移動させる動作」になります。
普段の生活では、無意識に二つの動きを切り替えて体を操っています。
二つの動きはその性質が全く逆なので、使い方を間違えて体を壊している人がたくさんいます。
日常で使う頻度にはかなり差があって、よく使うのは重心移動の方です。
二種類の動きを条件によって切り替えて使う事で、臨機応変な体の使い方が出来ます。
動きとして簡単なのは重心固定なので、体が疲れたり、気持ちが緊張したり、焦ったり、やる気が無くなったりと、心にネガティブな感情が出る時に、心と体の動きがせめぎ合って重心固定の動きが優位になりやすくなります。
本来、重心移動を使うべき状況で真逆の重心固定で体を使ってしまうと、体は密かに悲鳴を上げます。
この悲鳴に本人は意外と気づけないので、そのまま気付かずに行くと体が壊れてしまいます。
肩首の痛みや腰痛ひざ痛などなど、諸々の慢性的な痛みの原因は、ほとんどがこういった動きの間違いから来ていると言えます。
下の動画と解説は、二つの動きを明確に感じ分け自由にコントロールするための練習方法の一つです。

まず図Aの様に直立に立ちます。
足の裏のどこかに重心が乗っているのがわかると思います。
このときの感覚を基準にするので、しっかりと体で感じて覚えてください。

しっかり覚えたら、今度は図Bのようにゆっくりと両腕を前ならえの位置へ上げます。
このときよく感じてほしいのは、体のどこかが少し後ろへ動いたはずです。
図Bでは少し頭が後ろに動いていますが、人によって背中かも知れないし、お尻かも知れません。
とにかく腕を前に出したぶん、どこかが後ろへ移動しているはずで、これは重心を移動させずにバランスを取るためです。
このとき、自分の体のどこかが後ろに移動しているのをしっかり感じてください。
そして重心の位置は変わっていない事もしっかり感じてください。
これがはっきり感じられたら、ここからが難しくなります。
では解説。
図Bの状態から、後ろに移動させている体のどこかの部分。
そこを後ろにやるのをやめるのです。
体を楽にして無駄な緊張を抜いて、腕は前に伸ばしたまま図Aの状態になる感じ。
すると当然バランスは崩れて、体は伸ばした腕の方へ倒れていきます。
そのままにしてると倒れるので、自然に足が前に出ます。
伸ばした手に歩いて近づいて行くように。
これを図Cであらわしています(イメージをわかってもらうための図なので少し簡略化・誇張しています)。

このときの感覚が重心が移動していく時の感覚です。
ポイントは、図Bから図C(重心固定➞重心移動)へ切り替える所です。
まずはこの切り替えが自由に出来るようになってください。
実は図Cの動きは、自然に歩く時の動作とほぼ同様で、ほとんどの人は自然と出来る動きです。
でも、緊張して力んでいると、図Bのような動きになってしまいます。
リラックスして力まず自然の動きに逆らわなければ、図Cの動きが自然と発動すると考えて下さい。
あるシチュエーションであれば自然に切り替えて出来ている動きでも、いざそれを意識的にやろうと思うと、ちょっと難しいと思います。
指導者がいないと無理かもしれませんが、この絵を見ながら少し試してみてください。
体の感覚が鮮明になるように意識しながら。
ここでは体の横方向への重心移動を題材にして話を進めて行こうと思います。
下の図をご覧ください。

図Aは両腕を垂らして直立状態。重心▲は中央に有るはずです。
その状態から左腕を横に広げていったのが図Bです。

このときおそらくですが、半数以上の人が重心が動かないか、あるいは右側へ少し移動させた感覚になるのではないでしょうか?
もちろんこれがダメと言うわけではありません。
そう言う体の使い方もあります。
只ここでは、重心が左側へ自然に移動する図Cの感覚を練習します。

では練習してみましょう。
動画も参考にご覧ください。
どうでしょうか。上手くいきましたか?
上手くいった人は反対の腕でも同じようにやってみて、重心が左右へ自然に移動する感覚を十分に感じてください。
この「意識しなくても自然に移動する感覚」は、体を自然の摂理に則って使うために必要不可欠な感覚です。
上手くいかなかった人は、ちょっと意識が強すぎるのかもしれません。
「こうなるはず!」「こうしよう!」などと頭で考えすぎていると、体が余計な緊張をして自然の動きに逆らってしまいます。
そのせいで自然の動きを感じることが出来なくなります。
ポイントは、何も余計なことをしない事。
ただ楽に立って片腕を横へ広げるだけ。
あとは体が自然にやってくれます。
この重心(バランスを取って支える)感覚を感じるのが難しいのは、「感覚が無いのを感じる」必要があるからです。
「有るのを感じる」のではなく「無いのを感じる」。
一般的に体の感覚として意識しやすいのは、筋肉の緊張やそこにかかってくる重さなどです。
重心感覚もこれと同じように考えてしまうと、筋肉の緊張やそこへの荷重と言った「手応えのある感覚」を探してしまいます。
しかし、重心を感じるには、手応えが無いところに答えがあります。
例えば、手のひらに長い棒(ほうきの柄とか)を乗せてバランスをとる時。
棒を握っていれば、割と簡単に倒れないように出来ると思います。
この時、棒を斜めに倒し気味にすると、握ってる力が急に強く必要になりますよね。
でも棒を垂直に戻せば、握ってる力はほぼ必要なくなるはずです。
完璧にバランスを取れば、握る力は全く必要なくなります。
握る力が要らなくなるのは、棒のバランスが取れる一点に重なったからです。
少しでも傾いたらバランスは取れません。
重心を感じるのは、この一点を感じるのと同じです。
このバランスの取れる一点は、体の中で体の形や動きにリンクして前後左右に常に移動します。
2019/10/16作成(2021.09更正)