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筋肉の伸び縮みと緊張がゆるむ原理

筋肉の伸び縮みの仕組み

筋肉

筋肉の伸び縮みを、ゴムが伸び縮みするのと同じに捉えている方は多いのではないでしょうか?
でも、そのイメージにはちょっとした誤解があります。
筋肉の構造と伸び縮みのメカニズムをなるべく分かりやすいように書きたいと思います。

筋肉はピストン構造

筋肉の基本構造は、ピストンと同じ構造です。
ゴムのようにその繊維自体に伸縮性があるのではありません。
※筋繊維に伸縮性はあるのですが、ここでは筋肉の基本構造を話したいので弾力については割愛します。 ピストン構造

筋肉は、二つの物体がスライドすることで全体の長さが変わります。
これは竹の水鉄砲のようなピストン構造と同じです。
筋肉を伸ばしても、ゴムのように線維が細くなって伸びるのではなく、ピストンのように筋肉繊維が滑り出しスライドして長さを変えます。

筋繊維を筋膜が包む多重構造

さて、筋肉・筋肉と書きましたが、正確には筋原線維と言うべきですね。
細い細い筋肉の線維の名前です。
筋肉全体を見ると、実はゴムと同じ特徴を持った部分もあります。
それが筋膜と呼ばれる部分。
ソーセージの皮のように筋線維の周りを取り囲んでいます。
筋肉の端の部分、いわゆる腱と呼ばれる部分も、筋膜が束にまとまったものです。つまり正しいイメージは・・・・

ピストンを沢山縦に並べて、その周りを伸縮性のある膜で包んで、それを何本も束ねて、また膜で包む。
その束の塊が筋肉。

筋繊維

筋繊維と筋膜では伸びない理由が違う

筋肉が伸びないと言う事を、筋膜と筋繊維に分けて考えます。

筋膜(ゴムの膜)だけが伸びない場合。
これは、ただ膜組織が硬いだけ。
運動不足も一因となります。
地道に動かすことで、次第に伸びるようになります。

筋線維(ピストン構造)が伸びない場合。
ピストンをスライドさせる制御がどこかおかしくなっています。
なにか治療が必要かも知れません。

筋膜も筋線維も伸びない場合。
筋肉全体が制御の面でも構造の面でも伸びにくくなっているため、動かしにくく、無理に動かすと強い痛みが出るような状態です。
無理して伸ばせば、筋肉のどこかが壊れることもあります。

筋膜と筋繊維 伸びない原因と緩める順番

では、筋膜、筋線維それぞれの伸びない理由を考えてみましょう。

筋膜が伸びなくなるのは、動かさなかったことで膜と膜の間の潤滑性が低下し、次第に癒着し、膜自体硬くなるからだと考えられます。
これは、癒着を取りつつ少しずつ動かして行く事で、しだいに柔らかさを取り戻し、いづれ伸びるようになるでしょう。
しかし、筋線維が伸びないのには、別の理由があります。
それは、伸びないようにどこかから収縮命令が来ていることです。
筋繊維に命令が送り続けられているので、筋繊維が緊張を続けられます。
このことから、筋繊維と筋膜、どっちを先に治すかが必然的に決まってきます。
筋繊維の収縮を治し → 筋膜の硬さを治す 順番が効果的です。
これを逆の順番でやってしまうと、ただただ痛いだけです。
痛いだけでなかなか素直に伸びてはくれません。

ここで問題になってくるのは、ではどうやって筋繊維の緊張命令をリセット(正常化)させるのかです。

筋繊維の緊張命令をリセットさせる

筋繊維の緊張命令をリセット(正常化)させる方法はあるのでしょうか。
命令が出続けるメカニズムさえ正確には分かっていません。
ましてやそれをリセットさせる方法など、そう簡単には分かるはずもありません。
ただ、緊張命令が出続けてしまう現象と似ていると言われる現象があります。
それは、「ハウリング」と「筋肉の痙攣(こむら返り)」です。
ハウリングは、マイクとスピーカーを近づけると「ブーン」「キーン」 と嫌な音が鳴る現象で、音がマイク→スピーカー→マイクとぐるぐるループすることで起こります。
筋繊維の緊張も、緊張命令のループが起こっているのではないかと言われます。

筋肉の痙攣は、緊張命令が極端に増大した現象で、抑制命令が効かなくなっているとも言えます。
一時的な現象ですが、こむら返りなどは筋繊維で起きる異常命令現象としてよく知られています。
「ハウリング」と「こむら返り」を直す方法を考察すれば、筋繊維の緊張命令をリセットさせる方法が見つかるかもしれません。

ハウリングを止めるには、マイクとスピーカーの距離を離す(位置関係を変える)のと、スイッチ(電気)を切る方法が考えられます。
こむら返りは、スイッチを切ると言うわけにもいきませんが、筋繊維をいったん伸ばせば命令はリセットされます。
どちらも、命令(電気、神経伝達)を切らなくても、物理的な位置の変化を起こせば、命令もリセットされ正常に戻ると言えます。
この考えを筋繊維の緊張命令に当てはめることが出来るなら、緊張命令へ直接アプローチは出来ないが、筋繊維の物理的な位置関係を変化させられれば、緊張命令をリセット出来ると言えます。

筋繊維の中の引っ掛かりを外す

実際の臨床の中で、関節の動き・筋肉の状態を触診していると、どうにも伸びなくなった部分が筋肉の中に見つかる事があります。
それを普通に伸ばそうとすると、まるで鉤状(かぎじょう)に曲がった何かが引っかかっていて、伸ばそうと引っ張っても鉤がどんどん食い込んで、伸ばせないと言う現象が現れます。(図A)

筋肉の緩む原理

力を更に込めて引っ張ったところで、筋肉の緊張は増すばかりで、伸びる様子はあらわれません。
この時、鉤が引っかかった感じを保ちつつ鉤が抜ける方向へ動きをプラスすると(図B)、まるで刺さっていた鉤が抜けたかのように、伸びなかった筋肉が抵抗なくスーッとゆるんで筋肉が伸びて来るのです。

この動きでなぜゆるむのか。
小さい筋繊維に対しての現象ですが、これをもっと起きサイズに直して考えてみます。

力の踏ん張りどころを外すと緩む

「筋の緊張が伸ばせない」と言う状態をもう少し大きな視野で見ると、立っている人を引っ張る現象に置き換えることが出来ます。
立っている人を普通に引っ張っても、相手は抵抗して簡単には引き寄せられません。
引っ張られないように足元を地面に踏ん張って、引っ張られる力に抵抗します(図C)

人を引っ張る時の抵抗

この状態もちょうど鉤が地面に食い込んで力を出している形になります。
しかし、ここに鉤が抜ける方向への動きをプラスさせると、人は踏ん張りどころを失い、抵抗出来ずに浮き上がるため、軽く引き寄せることが出来ます。(図D)

人の腕を引っ張る時、腕で引っ張り返されているのだと思いがちですが、本当は腕ではなく足が地面に対して食い込む部分を引っ張り返す動きの源として使っています。
なので食い込めないようにすると、力を出すことが出来なくなります。
この動きは一見簡単そうに見えますが、実現するのは感覚的に難しく、相当訓練しないと出来ない動きです。

人が力を出すために踏ん張っている。
それと同じ状態が筋繊維の中にも作られていると考えるのはどうでしょう。

ミオシンとアクチンが引っ掛かっていると考えると

筋肉の繊維の中を拡大して考えてみます。
筋肉が細い繊維の束で出来ていることは説明しましたが、その繊維を細かく見ていくとミオシンとアクチンと言う2種類の繊維が現れます。
筋肉はこの2種類の繊維が接触しスライドすることで力を出すこと(伸縮)が出来ます。

筋肉がゆるんでいるときは、2種類の繊維は図Eのように離れた状態と思ってください。

筋原線維

力が発生する時は、図Fの様に2種類の繊維の間に橋が繋がります。
この橋が繋がると筋肉には張力が発生し、さらにこの橋が首を振るように動くと筋肉が収縮力を発生します。

もしかすると、筋肉の中のゆるむことが出来ず不自然に緊張が持続する部分は、図Fの状態で止まっているのかも知れません。
それを引っ張っても抵抗する力を増えるだけですが、鉤(橋)が外れる方向に動かせば立ってる人を引っ張る時と同じように簡単に引き寄せることが出来るのかもしれません。

ミオシンやアクチンの構造と、踏ん張りの働きを同じと考えるのは強引なのかも知れませんが、可能性は有ると思っています。

2018.11.30作成(2022.04更正)

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