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自分を絞めつける力が自律神経を乱す

自律神経失調症特有の緊張パターン

自律神経失調頭痛やイライラ、不安、疲労感、不眠、様々な痛みや違和感など。自覚症状はあっても、検査して原因となる病気が見つからない場合。
不定愁訴と言われ、心身症やうつ病、あるいは自律神経失調症などと診断される事があります。
そんなかた達の体の状態を観察すると、大きく二つのパターンに分けることが出来ます。

パターン1
表層も深層もどちらの緊張も高く、かつ広範囲に発生。
パターン2
表層の筋肉は柔らか過ぎるぐらいなのに、深部は緊張が広範囲に起きている。

パターンの違いの理由は分かりません。
パターン1の方は明らかに緊張しているのが分かりやすく、パターン2の方は慎重に観察しないと緊張が分かりづらい。
どちらのパターンも、体に不要な緊張が持続して、自分自身を締め付ける力を出し続けているのは同じ。
この力が持続してしまうと、次第に様々な症状に発展して来る。
出来るだけ早く取り除くこと。
一度自律神経まで悪影響が出始めると、体の不要な緊張を取り除くには時間がかかります。

表層も深層も緊張の人

不定愁訴パターン1の「表層も深層もどちらの緊張も高く、かつ広範囲に発生」していた方の話です。

その方は身体の不調が何年も前から続いています。
週に2回のペースで何年間もマッサージと鍼治療に通い続けて来たそうです。
症状は不定愁訴。
ハッキリとしない症状です。
ある時は頭痛。ある時は全身のだるさ。痛みの場合もあります。
そして症状が出る場所がいつも変動する。
めまいや動悸の場合もあります。

全身一通りチェックすると、体中がガチガチです。
表層も深層もどちらの筋肉の緊張も高く、かつ広範囲です。
緊張範囲が広過ぎるので、まず手足の大きな関節(足首、膝、股関節、肩関節、肘、手首)を中心にした施術で緊張を解いて行くことにしました。
緊張は他の緊張と連動していることが多いです。
緊張度にも順位があり、一番度合いの高いところを緩めると、それに関係した度合いの低い緊張は一緒に緩んでしま事があります。
ところが、このかたの場合、この連動がほとんどありません。
連動で緩まないので、嫌になるほど沢山のポイントを緩めていく必要があります。
そのためか、施術後の反動も若干出やすくなりました。
施術を始めて一ヶ月間は、手足に筋肉痛が出たり、だるくなったりなどの大きな反動が出ましたが、二か月経った頃には、それもあまり出なくなってきました。
(締め付けが緩み、動き始めた筋肉は、最初痛みを出す事があります。個人差はありますが、この方には顕著に現れました。)
3ケ月経つ頃には、他の小さい関節にも施術を行える時間的余裕が出てきました。
すると、このころから不安定だった体調が改善を見せ始めました。
施術間隔も、一週間ごとから二週間ごとに広げることにしました。
自律神経失調と言われる方の施術では、改善がすぐには現れ無いことが多いです。(一部例外はありますが)
この方も、3か月目に入るまでは、改善効果が現れませんでしたが、コツコツ緩めてきた施術貯金が、ある程度溜まって突然改善し始めたような感じです。
そこからは改善が速いですね。
その後はどんどん改善し、4ケ月目には月に一度体調に合わせて来院してもらう程度になりました。
統計を正確に取ったわけではありませんが、経験上、自律神経系が十分安定するのに約三か月と言うのが一つの目安になるようです。
筋トレやダイエットも同じ3ケ月周期で計画を立てることが多いので、人の身体が変わるためには3か月は必要なのかも知れません。

深部だけ広範囲に緊張の人

今度はパターン2の「表層の筋肉は柔らか過ぎるぐらいなのに、深部は緊張が広範囲に起きている」方の話です。

不眠1年以上前から、首肩コリが強くなり不眠になってしまった女性です。
病院では軽いうつと診断され、睡眠薬と漢方薬を処方され、飲み続けているそうです。
薬のおかげで、当初のひどいコリ感は軽減し、眠ることは出来るようになったのですが、睡眠薬が無いと眠れない状態になっていました。

来院時は首~肩、背中や腰全体、両腕両脚に強いコリ感を感じていました。
当初は、顎にも痛みがあったそうでが、顎の痛みは今は治まっていました。
症状の原因は思い当たらないそうです。

体全体を診ると、一見そんなに緊張していないように見えます。
しかしよく検査すると、訴えの通り全身の筋肉が必要以上に緊張しています。
ただし、表面は柔らかく、深部のみ緊張が出ています。
深部だけ緊張が出ているのは珍しいことではないのですが、その範囲が全身に及んでいるのがこういった症状の方の独特な傾向です。
仰向けに寝た状態でも、その緊張は持続しています。
自律神経失調症や、うつと診断されたかたを沢山みて来ると、身体の緊張が抜けなくなって悲鳴を上げているような状態の方が多いですね。
「力を抜けばいいのに」と、健康な方は思うかも知れません。
しかし、本人は意識して力を入れているわけでは無いので、意識しても力を抜くことが出来ないのです。
睡眠薬には筋肉の緊張を弛緩させる作用もあるので、薬を飲んでいなければもっと強い緊張が出ていたのかも知れません。
症状は1年以上前から、緊張はほぼ全身。
じっくり時間をかけて施術していく方針で進めることにしました。
まずは、身体の中でも動きが大きく、身体を柔らかく動かすのに重要な股関節と肩関節周囲の緊張から緩める事にしました。

施術を始めて3回目の頃。
股関節・肩関節の緊張が緩んで来ると、それに伴い症状も軽快して来ました。
昼に眠気が起きるようになり、夜も自然と眠くなるようになって来たようです。
身体を楽に使えるように、身体の動かし方のセオリー(基本の重心移動など)も指導しながら、施術間隔を2週間置きに広げて行きました。
施術範囲も胸椎、肋骨、四肢末端、頸部へと広げ、施術開始2か月目には、毎日飲んでいる睡眠薬の量を半部にしても眠れるようになって来ました。
一か所二か所の局所的な緊張ではなく、全身に緊張が面状に広がっているので、とにかく見つかった異常緊張を一つでも多くとる事に専念しました。
緩みにくかった斜角筋、肩甲挙筋、僧帽筋の緊張が取れて来ると、さらに調子は良くなり、施術5か月目に睡眠薬を飲まなくても眠れるようになりました。
もう不眠に関しては心配なさそうです。
時々、首や臀部の凝りが強くなることがあるようで、本人の希望もあり、1~2ヶ月に一度のペースで施術を継続していく事になりました。

まとめ

ストレスや心配ごとで、心(脳、意識)が緊張すると体も緊張するのは事実です。
自分の体を自分で締め付けていくことになります。
ストレスや心配事が解決すれば、体の緊張も緩む、そうなればいいのですが。
体に緊張が残ってしまい緩まなくなることがあります。
すると、体に残った緊張の影響を受けて、今度は心(脳や意識)が緊張してしまうと言う、逆方向位の影響が出る事があるようです。
心(=脳)は常に体の状態を読み取っています。
緩めなくなった体の緊張を緩めてやれば、それを読み取った心(=脳)も緩みはじめる。
この機序も理解できると思います。

2016.掲載(2022.03更正)

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