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整体コラム

筋系の生理学

生理学(physiology )とは、生命現象を機能の側面から研究する生物学の一分野です。
ここでは、「筋系」の生理学について、「トートラ人体解剖生理学 Gerard J. Tortora (著), Sandra Reynolds Grabowski (著)」を参考に話を進めていきます。

目次

はじめに筋組織の型筋組織の機能筋組織の特徴運動単位について筋緊張について筋収縮のエネルギー筋疲労 加齢と筋組織心筋組織収縮の生理学筋の弛緩


はじめに

骨、関節は身体の枠組みを形成するが、それらは自力で身体を動かすことは出来ない。
動作は筋の収縮と弛緩により、筋が収縮すると筋の短縮と緊張を生じる。
筋組織は全体重の役40~50パーセントを占め、高度に特殊化された細胞によって構成されている。
筋組織の3つの型が、骨格筋・心筋・平滑筋である。

筋組織の型

骨格筋は・・・
骨に付着して骨格を動かし、意識的に制御することで収縮・弛緩を行うことが出来るため随意性である。
また、細胞分裂の可能性がある細胞が少ないため、骨格筋の再生能力は限定されている。
心筋は・・・
心臓においてのみ認められ、心臓壁の大部分を形成する。
骨格筋と違い不随意性であるため、その収縮は意識的に制御できない。
心筋は再生することが出来ない
平滑筋は・・・
血管、気道、胃、腸、のような空洞をもった内蔵の壁を形成する。
不随意性(意識的に調節できない)である。
平滑筋は他の筋組織と比較して、かなり再生能力があるが、皮膚などの他の形の組織と比較した場合は、かなり低いものである。
 

筋組織の機能

5つの重要な機能をはたす。
①身体運動を生みだす
歩く、走る、書く、うなづくといった身体運動。
 
②身体の姿勢を安定させる
関節を安定させ、立ったり座ったりといった、身体の姿勢維持を助ける。
姿勢を保持する筋はヒトが覚醒している場合、連続的に収縮している。
例えば頸の筋が持続的に収縮し、頭部はまっすぐに保たれる。
 
③臓器の容量を調節する
括約筋と呼ばれる平滑筋が持続的に収縮して、臓器の内容物の流出を防ぐ。
胃内の食物または膀胱内の尿の一時的貯蔵は、括約筋がこれら臓器の出口を閉じるためにある。
 
④身体内で物質を移動させる
心筋の収縮は血液を送り出し、血管壁にある平滑筋の収縮と弛緩は血管の直径を調節し血流を制御する。
平滑筋の収縮は食物および他の物質を消化管を通して移動させ、生殖器系では精子や卵細胞を押し出し、泌尿系では尿を促す。
骨格筋の収縮は心臓に血液が戻る手助けとなる。
 
⑤熱を産生する
筋組織が収縮することで熱が産生される。
筋肉によって放出される熱の多くは、正常な体温を維持するために用いられる。
震えとして知られる骨格筋の不随意収縮は、熱産生の速度を大きく高めることで身体を暖めることに役立つ。
 

筋組織の特徴

筋組織の4つの特徴
①興奮性・・・
筋組織(および神経細胞)が電気信号を生み出すことにより刺激を受け、反応する能力。
②収縮性・・・
電気信号によって刺激され収縮(短縮かつ太くなる)する能力。
③伸展性・・・
筋組織が損傷を受けることなく伸びる能力。
④弾性・・・
収縮または伸展の後、元の形に戻る能力。

運動単位について

筋肉は多くの筋線維が集まって出来ており、その筋線維に収縮命令を伝えるのが運動ニューロンと呼ばれる神経である。
一つの運動ニューロンによって支配される筋線維の集合体を運動単位と言いう。
一つの運動ニューロンを刺激することで、その運動単位の中の全ての筋線維は同時に収縮する
大きく力強い運動をする筋では、1本の運動ニューロンが支配する筋線維の数が多く、小さく正確な運動をする筋では1本の運動ニューロンが支配する筋線維の数は少ない。
例えば、目を動かす筋のように小さく正確な運動を制御する筋は、10本以下の筋線維からなる多くの運動単位を有する。
腕の上腕二頭筋や下腿の腓腹筋のように、大きく力強い運動に関する筋は、少数の運動単位しか持たず、一運動単位あたりの筋線維数は2000本にもなる。
 

筋緊張について

筋全体が収縮していないときでも、筋の緊張を維持させるために少数の運動単位が絶えず交代しながら交互に活性と不活性を繰り返す
この過程で得られる筋の緊張を筋のトーヌスという。
この筋緊張は骨格筋を強固に保つが、動きを生じさせるほど十分に強固な収縮とはならない。
例えば、頚部の背側部の筋の緊張は頭部をまっすぐに保つ。
 

筋収縮のエネルギー

身体の大部分の細胞とことなり骨格筋線維は、弛緩状態でのほんのわずかにATPを消費する不活性状態と、収縮状態で急速にATPを消費する大きな活性状態をしばしば切り替える。
しかし筋線維にATPが存在するだけでは、わずか数秒しか収縮できない。
(ATP: アデノシン三リン酸は生物の”エネルギーの通貨”であり、その機能はエネルギーを、エネルギー放出反応からエネルギー要求反応に移行し、細胞活動を維持 することである。これらの細胞活動には、筋収縮、細胞分裂時の染色体の運動、細胞内の構造要素の活動、細胞膜を通過する物質の移動、小さな分子から大きな 分子への合成などである)
激しい運動を維持するためには、更なるATPが合成されなければならない。
 
筋線維のATP産生のための3つの源・・・
①クレアチンリン酸
安静時に筋線維は必要以上のATPを産生し、この余剰ATPはクレアチンリン酸を作るために使用される。
クレアチンリン酸は筋が収縮する際急速にあらたなATPを産生することが可能。
クレアチンリン酸とATPはともに、約15秒間にわたり最大収縮するのに十分なエネルギーを筋に供給する。
このエネルギーは100メートルダッシュで走ると言う激しい活動の短時間の噴出には十分である。
筋の活動が15秒を越して持続する場合、クレアチンリン酸の供給が枯渇。
ATPの次の源は解糖である。
 
②解糖
グルコース1分子を分解してピルビン酸にすることで2つのATPを産生する一連の反応。
グルコースは血液中から筋線維に容易に通過し、またグリコーゲンの分解によって筋線維内でも産生され、解糖の反応を起こす。
筋で起こる解糖の反応は酸素を用いずに起こるため嫌気性と言う。
解糖は例えば400メートルレースの最後の300メートルを走るのに十分なATPを最大筋活動で約30~40秒間供給できる。
 
③好気的細胞呼吸
好気的細胞呼吸とは、ミトコンドリア内で生じ酸素を必要とする一連のATP産生反応のことであり、30秒以上持続する筋活動はこれに依存している。
筋線維には2つの酸素供給源がある。
(1)血液から筋線維内に拡散する酸素
(2)筋組織内のミオグロビンから放出される酸素
ミオグロビンは筋線維内にのみ認められる酸素結合タンパクであり、酸素が豊富な場合は酸素と結合し、酸素が不足すると酸素を放出する。
解糖と比べ好気的細胞呼吸は、個々のグルコース分子からより多量の(約36個)ATP分子を産生する。
10分以上も持続する活動では好気的細胞呼吸は必要とされるATPの大部分を担っている。
 活動中、酸素の欠乏がピルビン酸を細胞質中で増強させるときがある。次に多量のピルビン酸は、筋線維から血液中に拡散し乳酸に変化する。肝細胞は乳酸を取り込みグルコースへと転化し、新たなグルコース分子をもたらし同時に血液が酸性になるのを防いでいる。
 

筋疲労

持続的活動後、筋が強制的に収縮する能力をなくすことを筋疲労と呼ぶ。
筋疲労における要因・・・
・筋小胞体からのカルシウムイオン放出の低下
・クレアチンリン酸枯渇
・不十分な酸素
・グリコーゲンや他の栄養素の枯渇
・乳酸およびADPの蓄積
・アセチルコリンを十分に放出するための運動ニューロンにおける神経インパルスの機能不全
など・・
 
乳酸が増すと体液のpHの低下が引き起こされると思われるため、筋疲労はpHが正常な許容範囲を下回って低下するのを防ぐ恒常性の機序とみなされる。
 
運動単位の動員
収縮する運動単位の数が増加する過程は、運動単位の動員と呼ばれる。
普通、筋線維を支配する各運動ニューロンは非同期的に興奮する(ある運動単位が収縮しているあいだ、他のものは弛緩している。)
運動単位活動のこのパターンは、収縮する運動単位を交互に切り替えることで筋疲労を軽減、遅らせ、それにより収縮は長時間持続可能となる。
 
運動と骨格筋組織
ジョギングやエアロビクスのような規則正しい反復性の活動は、骨格筋中の毛細血管の数を増大させ、好気的細胞呼吸に対する酸素に富んだ血液の供給を改善する。
それに対し重量挙げのような活動は、筋タンパクの合成を刺激し、ある期間にわたって筋線維の直径の増加を起こす筋肥大をもたらす。
その結果、エアロビクストレーニングは持続的活動のための耐久力を作るが、ウェイトトレーニングは短時間の技のための筋力がつく。
一定期間の激しい運動後12~48時間後に、骨格筋はしばしば硬直、圧痛、腫脹を伴う遅発性の筋肉痛を示す。
遅発性の筋肉痛の原因は完全には理解されていないが、顕微鏡レベルでの筋損傷が主な要因であると思われる。
筋が一定の基準で収縮している場合に生じる変化とは対照的に、まれにしか収縮しない筋は筋の衰弱である筋萎縮を起こす。
筋が使われなければ廃用性萎縮を起こす。
寝たきりのヒトや大きな筋群を固定するギプスをしている人は、不活動の筋への神経インパルスの流れが大きく減少するため廃用性萎縮を起こすことがある。
神経インパルスがその運動ニューロン内で止むならば、筋は神経支配の除去性萎縮をこうむる。
6ヶ月~2年間で神経除去された筋は、元の大きさの1/4になり、筋線維は線維性結合組織にとって代わられると思われる。
線維性結合組織への移行が完了すると、もとの筋線維に戻ることは出来ない
 

加齢と筋組織

誕生後、骨格筋線維の数は増加するものではない。
幼児期から筋線維の大きさは下垂体前葉から産生されるヒト成長ホルモンの部分的制御下で増大する。
男性の精巣及び副腎からのホルモン、テストステロンは骨格筋線維の太さを増大させる。
男性ではより多いテストステロンがあるため、一般に女性よりも筋は大きい。
ヒトでは、線維性結合組織と脂肪組織に取って代わられ、骨格筋が進行性に失われていくが、この現象は年齢が約30歳頃から始まる。
ある程度、この筋量の減少は活動の低下による。
筋量の喪失には最大筋力低下筋反射の遅れが伴う。
しかしながら、持久力と筋力のトレーニングプログラムにより、年齢に関連した筋の遂行能力の低下を遅らせることも逆転することも可能である。

心筋組織

骨格筋と心筋の主な差異は、刺激の源である。
骨格筋組織が、運動ニューロン中の神経インパルスから放出されるアセチルコリンによって刺激される場合のみ収縮できるのに対して、心筋線維には、各心臓収縮の開始にペースメーカーとして作用するものがあるため心臓は鼓動する。
心臓収縮を調整する、組み込まれた内因性のリズムは自動性と呼ばれる。
ある種のホルモンと神経伝達物質は、心臓のペースメーカーを速めたり緩めたりすることで心拍数を増やしたり、減らしたり調整されている。
正常の安静状態では心筋組織は、1分間に平均して焼く75回くらい収縮し弛緩する。
このため心筋組織には酸素と栄養素の一定の供給が必要である。
心筋線維のミトコンドリアは、骨格筋線維中においてより大きく、数も多く好気的細胞呼吸を介して必要なATPの大部分を産生する。
さらに、心筋線維は運動時に骨格筋細胞より放出される乳酸をATPの生成に用いることが出来る。
 

収縮の生理学

筋の収縮にはCa2+とATP(エネルギー)の両方が必要である。
筋線維が弛緩した状態では、筋形質中のCa2+は筋小胞体のCa2+能動輸送ポンプによって継続的に筋小胞体中へ輸送される。
その為筋形質中のCa2+濃度は低い。
しかし、筋活動電位が起きると、筋小胞体のCa2+放出チャネルが開き、筋形質中にCa2+が放出される。
Ca2+はアクチン上のトロポニンに結合すると、トロポニン-トロポミオシン複合体の形が変わり、アクチン上のミオシン結合部位が露出する。
いったんミオシン結合部位が露出されると、下記①~④の収縮サイクル(フィラメントの滑走を引き起こす反復性の一連のサイクル)が始まる。
①ATPを分解させる
ミオシンの頭部は、ATPをADP及びP(リン酸群)へと分解させるATPaseを含んでいる。この分解反応は、ADPとPがミオシン頭部に付着したままではあるが、ミオシン頭部にエネルギーを与える。
②連結橋の形成
エネルギーを与えられたミオシン頭部はアクチン上のミオシン結合部位に付着し、連結橋を形成しリン酸群を放出する。
③発動工程(力の発生)
リン酸群の放出は収縮の工程を引き起こす。ミオシン頭部は回転または旋回してADPを放出する。数百万のミオシン頭部の旋回につれて生み出される力は、太いフィラメントを越えて細いフィラメントをH帯の中へ滑り込ませる。
④ATPの結合と分離
発動工程の終了時、ミオシン頭部はアクチンに強固に付着したままである。ミオシン頭部がATPの別の分子に結合すると、ミオシン頭部はアクチンから離れる。
ミオシンATPaseが再びATPを分解するにつれて、ミオシン頭部は新しい方向に向かい刺激され、細いフィラメントに沿ってさらに別のミオシン結合部位と結合する準備状態に入る。
収縮サイクルはATPとCa2+が筋形質中で利用可能な限り繰り返される。
 人は死ぬとその後に、Ca2+が筋小胞体から漏出されトロッポニンへの結合を開始し、細いフィラメントの滑走を引き起こす。だがATP産生は中断されているためミオシン頭部はアクチンから解離することが出来ない。
その結果生じる筋の硬直は死後硬直と呼ばれる。
それは24時間持続し、次にさらに組織が分解するにつれて消失する。

筋の弛緩

筋線維は2つの変化により、収縮した後に弛緩することを可能にする。
第一に、神経伝達物質のアセチルコリンご分解されると筋活動電位の発生が終わり、筋小胞体のCa2+放出チャネルが閉じる。
第二にCa2+が筋形質から筋小胞体中に急速に輸送される。
筋形質中のCa2+値が低下するにつれて、トロポミオシン-トロポニン複合体はアクチン上のミオシン結合部位を覆うような位置まで戻り、細いフィラメントは弛緩した位置へ滑走し、筋が弛緩する。
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「筋系の生理学」について書いてきました。
内容は「トートラ人体解剖生理学」を参考に書いていますが、医学の分野もどんどん進歩しています。
以前は脳細胞の数は成人後は増えることなく減るのみだと言われていましたが、現在では脳細胞の一部は成人後も増えることがわかっています。
今回書いた内容も、数年後には訂正、加筆されているかもしれません。
楽しみですね。
(2016年6月更新)