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全力で投げられないピッチャーの肩

ピッチャーの肩

スポーツをやっていれば、怪我はつきものかもしれません。
ケガが治りきらず、大好きなスポーツに支障が出るようでは、辛いですね。
今回のかたは、学生時代(高校)に、野球部で肩を怪我しました。
それ以降、全力で投げると、肩の抜けるような痛みが出るようになりました。

症状は、高校時代の野球部の投球練習で、無理をし過ぎたのが切っ掛けで起きるようになりました。
だんだんと肩の痛みが増してきたそうです。
当初、激しい痛みがあったそうですが、その激しい痛みは治ったものの、全力投球すると、肩が抜けそうな痛みが出るようになりました。
病院や他の治療院にも通ったそうですが、8年経った今も相変わらず、全力で投げると、関節が抜けるような痛みが肩に出ます。
日常生活レベルで、肩や腕を使うのには、何の問題も出ていません。
また、軽いキャッチボールぐらいだと、肩の痛みはあまり出ないようです。
少し距離の長い遠投をすると、肩には抜けるような痛みが出ます。
肩甲骨をぐるぐる回すように動かすと、鎖骨周辺でゴリゴリ音が鳴り、肩甲骨が動かしづらい感覚があるようです。

肩関節は、投球時のように大きく動かすと、関節が抜けやすい状況になります。
肩関節の構造と動きはちょっと複雑で、大きく動かすと「肩が抜けかけてる」と言ってもいい動きをします。
メインの大きな関節は、肩甲骨側にある球面状の関節です。
これは皆さんのイメージ通りだと思いますが、もう一つ、大きく動かしたときのみ機能する、第二の関節が、肩甲骨と鎖骨のつなぎ目部分に作られていて、大きな関節面から半分抜けた後は、その小さい関節(第二の関節)を使い、肩の可動域を広げます。
解剖図を見ると分かるのですが、これじゃあ肩が抜けてしまうだろうと驚くと思います。
しかし、実際には肩が抜けることはありません。
第二関節へ移動した後も、周囲の筋肉が関節の動きを導き、肩甲骨や肋骨や背骨なども連動して肩の動きをサポート。
関節がずれないようにするため、力が外へ広がらず、骨の中心へ集まるよう動きが導かれます。
肩関節だけで肩を動かすと、肩は構造上簡単に壊れます。

彼の問題点は、腕を大きく動かした時に、肩甲骨がうまく協調運動(サポート運動)していない点です。
協調を妨げているのは、鎖骨の上下に付着している筋群の過剰な緊張です。
その緊張の元を探っていくと、頸椎(C3~7)や胸椎(T1~5)に緊張が発生しています。
そのせいで肩関節自身にも緊張が出ていました。

施術では、緊張が出ている頸椎と胸椎を緩めて行きます。
仰向けで頸椎をしたから支えるように持ち、緊張でバランスが傾いているポイントを探します。
一カ所だけではなく、4~5カ所の緊張が出ていました。
傾いているポイントが見つかったら、そこで支え直して緩むのを待ちます。
胸椎はうつ伏せで行いますが、胸椎には肋骨も繋がっているので、肋骨からのアプローチも有効です。
数回施術を行い、頸椎、胸椎に発生している緊張はだいぶ緩んできました。
無理を続けてしまったのと、変な動きの癖もついてしまっていたので、なかなか簡単には緩みませんでした。

肩関節にも緊張が発生しており、関節が外へ向かうような力が働いています。
これをゆるめ、内方へ向くよう修正出来ると、肩の抜けるような痛みは出なくなりました。
球を受けてくれた捕手のかた曰く、「ケガをする前と同等の球の勢いが出ている」との評価を受けたようです。
外野から全身を使っての全力返球をした時に、一瞬ジーンと肩に痛みが走ったようですが、8年のブランクを考えれば、この程度は当然だと思います。
いきなり高校時代の肉体に戻れるわけはないので、焦らずトレーニングする必要があります。
8年間、痛みを庇った投球フォームが癖になっています。
体(脳)に染みついているはずです。
初心に戻ったつもりで、一から投球フォームを見直す必要もあります。

(2018年7月加筆修正)2021.09更新

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